2016 Fiscal Year Research-status Report
ダイバーシティ・マネジメントの民族誌的研究-企業活力の追求と人類学の可能性-
Project/Area Number |
15K12955
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関根 久雄 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60283462)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ダイバーシティ / 現地化 / 異文化理解 / 経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における具体的な調査対象として、日系コンビニエンス・ストア(以下、コンビニ)企業のアジア展開におけるダイバーシティ・マネジメントに定め、関連する先行研究(主に経営学的視点からの論考)を整理した。その結果、外国資本の出店規制が比較的緩く、実際に日系コンビニ企業が多くの店舗を展開しているタイ王国をフィールドとして設定することとし、同国におけるコンビニ企業の進出の歴史的経緯、日本型システムと現地の商慣行や文化的背景との齟齬や整合性に関する質的データを、日本国内およびタイ王国における実地調査を通じて収集した。日本国内では、コンビニ企業の海外事業部やタイ在住日本人(一時帰国中)、日本人のタイ研究者などにインタビュー調査を行い、タイ王国での調査では、合弁企業関係者やバンコクおよびその郊外に居住する人々、在バンコク日本人商工会議所関係者へのインタビュー調査を行った。さらに、現地で9000店舗以上のセブンイレブンを出店する現地法人が経営するパンヤピワット経営学院に調査協力を依頼し、コンビニ来店客に対するアンケート調査(アンケート用紙は当方作成)を、バンコクおよび地方都市などで実施した。 日本貿易振興機構アジア経済研究所において本研究課題に関する研究発表を行うと共に、タイ以外のアジア諸国における企業の海外展開の事例を収集した。2017年2月には、文献研究および実地調査の結果を整理する研究ノート的論考「タイにおけるコンビニエンス・ストアの現地化と『文脈化』」を執筆した。これはアジア経済研究所のウェブサイトで近々公開される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、アジアにおけるコンビニ企業の展開に関する文献を収集すると共に、企業の海外展開をダイバーシティ・マネジメントの観点から捉える研究の方向性を確立した。それに伴い国内およびタイにおけるインタビュー調査、タイにおけるアンケート調査を進めているところである。その結果、本研究における当該事象に対する分析概念として「文脈化」を見いだすことができた。海外進出する企業は、現地の関係者やシステムとの間に常にコンフリクトと調和の葛藤の過程にあり、それに対して企業関係者は一般的に「現地化」概念を用いて理解しようとする傾向にある。しかし、たいてい「現地化」は日本型システムをいかに効率よく適用させるかという次元にとどまり、必ずしもダイバーシティ状況の有効化を図るものではない。そこで本研究では、現地化概念と部分的に重なるものの質的に異なる概念として文脈化を位置づけ、企業の海外展開におけるダイバーシティ・マネジメントの実践過程を捉える分析枠組みを提示するに至った。 上記に加えタイ王国における研究教育機関(パンヤピワット経営学院)の調査協力も得られており、本研究課題は順調に進展しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
国内およびタイ王国での実地調査を継続し、企業におけるダイバーシティ戦略と実践の内容、現地化をめぐるコンフリクトの内容などについて、現地の文化的文脈とビジネス実践との関係に注目した「文脈化」概念を用いて分析を行い、海外展開する企業におけるダイバーシティ状況を実現するための条件を明らかにする。2018年2月までに本研究課題に係る成果物(論文)をまとめる予定である。
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Research Products
(3 results)