2015 Fiscal Year Research-status Report
アラスカ先住民集落でのソーシャルワーク活動に資する実践人類学的研究
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15K12960
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
井上 敏昭 城西国際大学, 福祉総合学部, 教授 (00265521)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / 先住民社会 / 援助 / メンター / アラスカ / 実践人類学 / 若年者 / 伝統的技法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に従い、平成27年8月10日より同月17日まで合衆国アラスカ州フォート・ユーコンにて現地調査を行った。現地では調査集落の先住民政府の事務局長、アラスカ州裁判所支所判事、小中学校長、先住民政府間協議会事務局長、同協議会が運営する診察所医師らと面会し、本プロジェクトの概要を説明するとともに協力を依頼し、全員から協力の内諾を得ることができた。あわせて、彼らから現地社会の若年者が直面している問題の諸相についてインタビュー調査を実施した。さらに、現地でメンター活動を独自に行っている人物に対して、メンター活動の伝統と現状についてインタビュー調査を行うとともに、許可を得て参与観察調査を実施した。同氏からは本計画への助言も得ることができた。本渡航では、先住民政府や市政府から、本プロジェクト(援助プログラムの実施)に対する正式な許可を得ることを目指していたが、彼らからの助言に従い、準備していたのとは別の方法で許可を得る方がよいと判断されたため、今次渡航での許可申請は見送った。 帰国後は現地で得られた質的データの整理を行った。 一方、日本の福祉現場で蓄積されたコミュニティソーシャルワークや若年者支援の知見や技術的方法論の調査について、研究代表者が、複数の研究協力者(福祉実践に携わる現場職員:今回は、某県児童相談所の元相談員、某市の社会福祉協議会職員)と面会し、情報を入手するとともに助言を受けることができた。当初の予定では、研究代表者が協力者の職場を訪問して調査を実施する予定であったが、協力者側の都合を優先した結果、いずれも協力者が研究代表者の本務校を訪問する形での実施となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者は、平成27年度に2回の現地調査を計画していたが、同年11月末の父親の逝去とそれに伴う母親の支援の必要が生じたため、年末年始の研究渡航を断念せざるを得なかった。そのため平成28年2月、3月の渡航を計画したが、現地の研究協力者および調査対象者の都合から、現地に赴いても調査、打ち合わせが困難なことが判明したため、渡航計画を中止した。2回目の渡航で実施する予定だった内容は、精査のうえ、平成28年度夏に実施予定の研究渡航にてカバーする予定である。 また研究に供する物品の購入については、フィールドノートなどの消耗品は平成27年度中に納品されたが、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラなどは年度内の納品が間に合わなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度: 研究代表者は、平成28年度8月7日より同月22日まで、アラスカ州フォート・ユーコンにおいて、前年度末冬に行う予定であったメンターによる若年者指導や相互扶助の伝統的手法の詳細・その現状での問題点についての現地調査を行うとともに、あわせて平成28年度の当初計画で実施予定であった、若年者の支援方法の確立に向けた検討会議を現地協力者と実施し、研究スケジュール上の遅れを挽回する. 国内では若年者支援のコミュニティソーシャルワーク部門、児童養護部門の専門相談員等に研究協力を仰ぎ、アラスカでの若年者の現状を共有したうえで、支援方法策定への助言を得る。これは、現地調査の前後にわたって複数回実施する。以上の作業を経たうえで、アラスカ先住民社会の伝統的手法を活用した若年者支援の方法・制度の試案の策定を目指す。研究成果の国内学会発表1回を目標とする。 平成29年度: 研究代表者は同年8月中にアラスカ州フォート・ユーコンに渡航し、前年度までに試案としてまとめた若年者支援方法を、現地研究協力者の支援の元、数名の若年者に対する支援の場面で試験的に活用し、その結果を研究協力者とともに検討し、最終案の策定を目指す。この最終案は、調査地社会での活用のみならず、オープンアクセス化して、ひろくアラスカ・カナダの先住民社会が利用できるように公表する。また、現地メディアを通じて成果の公表を行うほか、国内あるいは国外の学会、ソーシャルワーカーの研究会などでの成果発表を2回以上行うことを目標とする。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、平成27年度に2回の現地調査を計画し、1回目の調査は完了できたが、2回目の調査については、11月末の父親の逝去とそれに伴う母親の支援の必要が生じたため、年末年始の実施を断念せざるを得なかった。2月、3月の渡航を計画したが、現地の研究協力者の都合から、年度内の渡航計画を中止するに至った。 また物品費に関しては、平成27年度中に研究資料の整理及び現地での検討会議・研究成果の学会発表などに用いるパーソナルコンピュータの発注を行っていたが、納品が平成28年度になったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度での2回目の調査で実施する予定であった調査・検討会議等については、平成28年度に実施する調査でその内容をカバーする予定である。またパーソナルコンピュータ及びデジタルカメラについては、当初計画に沿った内容の機器が、すでに平成28年度4月、5月に納品済みである。
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Research Products
(4 results)