2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Promoting dialogue System between Victims/Bereaved families and Responsible party
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15K12965
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
土屋 明広 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (50363304)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 法社会学 / 紛争処理 / 津波被災訴訟 / 東日本大震災 / 対話的関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は子どもが死に至る学校事故において学校(設置者)と遺族とが対立関係を形成するに至るプロセスや原因を具体的な紛争事例に焦点を当てて検討することで、事故発生後の当事者間の対話促進と対立・紛争回避を可能とする制度設計を考察する足掛かりを得ようと試みたものである。 研究期間全体を通して東日本大震災によって子どもを失った石巻市立大川小学校児童の遺族ら(保護者)が提起した国家賠償請求訴訟(第一審、控訴審)を傍聴するとともに、遺族らと代理人である弁護士に継続的なヒアリング調査を行なった。ヒアリング調査では、遺族らが提訴に至った動機や過程、訴訟にかける期待などが明らかになった。具体的には、遺族らは事故後に発生した学校(設置者)との疎隔とそれによる「真実解明」への障壁を、相手方との間に対話的関係を形成することで解消しようと試みた。しかしながら訴訟制度は、当事者間の対話的関係形成を目的としておらず、また双方の主張に「責任」(損害賠償)の争いがある場合には、一方の他方への対話の呼びかけは応答されない可能性が高いものになる。本件訴訟の遺族らも訴訟を通じて目的が充足されない結果になった。 同時に本研究では提訴前の設置者による説明会(議事録)に焦点を当てて、両者が対立関係に至る過程を分析した。その結果、説明会においては対話的関係が形成される契機が散見されたものの、児童の被災原因を探求することが「責任」(被災時の判断や被災後の救援・捜索活動についての判断など)の有無や所在を問うことになること、また法的責任(損害賠償)に結合されること、そのため対話が途絶されてしまうことが明らかになった。 以上から今後は提訴前の交渉過程における免責制度や双方の対話的関係を可能とする具体的な制度について考察することが課題であるとした。
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Research Products
(3 results)