2015 Fiscal Year Research-status Report
極域国際法秩序形成・発展の推進原理:科学・環境・領土・組織
Project/Area Number |
15K12970
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
柴田 明穂 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (00273954)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 国際法学 / 北極 / 南極 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地理的及び法的前提が違うも、20世紀初頭からの人間活動の量的増大、質的変容に対応して形成・発展してきた南極域国際法秩序の100年間の歴史的教訓から、今後の北極域国際法秩序形成を促す推進原理とその方向性を明らかにすることを目的とする。 本年度は3ヶ年研究計画の第1フェーズに位置づけられるが、主に文献調査により、北極域国際法秩序形成の現状と課題につき明らかにし、それを南極条約体制形成過程と比較しながら、極域国際法秩序形成プロセスを基底する基本原理を抽出できないか検討した。その研究成果を研究論文、Japan and 100 Years of Antarctic Legal Order: Any Lessons for the Acticとして、査読付き国際年鑑であるYearbook of Polar Law第7巻の巻頭論文として掲載することができた。また、北極評議会(AC)の動向を具体的に知るために、AC議長国である米国国務省の極域担当局長を講師とした国際セミナー「The Arctic Council under the U.S. Chairmanship 2015-2017」を東京で開催し、現在進行中の北極科学協力協定に関する交渉の推移につき貴重な情報を得ることができた。 さらに、次年度以降の本研究第2フェーズ「極域現場の実態調査」を円滑に行うための人的コネクションや国際共同研究を構築するため、国内では国立極地研究所と北海道大学、海外ではフィンランド・ラップランド大学やノルウェー・北極大学などと具体的な協議に入った。南極研究についてアドヴァイスを受けるオーストラリア・タスマニア大学及びオーストラリア国立大学の研究者とは、メールベースで協議を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基本方針を基底する論文、Japan and 100 Years of Antarctic Legal Order: Any Lessons for the Arcticを、国際的に定評があり広い読者層を有する査読誌Yearbook of Polar Lawに掲載できたことは、本研究第1フェーズの成果として特筆に値する。加えて、北極評議会の最新動向につき国際セミナーを開催することができ、また、国内・海外の関係研究機関との共同研究の協議が進んだことは、次年度から始まる第2フェーズ「極域実態調査」の遂行にとっても重要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、予定どおりH28年度より第2フェーズ「極域実態調査」に入る。この実態調査は、両極域の現場で実際に行われている科学調査活動とその成果や意義、両極域で実際に問題となっている環境問題とそれへの対処のあり方、そしてこれら極域諸問題に対処するための国家管轄権の行使の実際のあり方などを、実地に調査するものである。H28年度は、まずは南極域でこの実態調査に入り、(1) 南極鉱物資源活動と科学調査活動の異同、(2) 南極バイオプロスペクティング活動と生物調査活動の異同、(3) 南極環境を「原生のままにしておくこと(wilderness)」の価値、(4) 基地や滑走路などのロジ設備の環境的負荷を中心に調査を行う。 なお、H28年度より5年間で実施する科学研究費基盤研究(B)「北極国際法秩序の構想」(研究代表:柴田明穂)が採択されたため、本研究は、上記基盤研究とも相乗効果を出しながら、南極域国際法秩序形成に重点をおいて実施していくことになる。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた南極条約関係の研究が、共同研究相手の国立極地研究所の都合によりH28年度に実施されることになったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度に実施する南極における現地調査の準備及び旅費として使用する。
|
Research Products
(12 results)