2017 Fiscal Year Annual Research Report
Criminal legal issues related to the introduction of automatic driving cars
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15K12972
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
石井 徹哉 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 教授 (20351869)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自動運転 / 刑事責任 / 道路交通法 / 製造物責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
自動走行システムは,あくまで自動車,道路交通システムの一部を構成するものでしかない。しかし,そこでは,自動走行システムと人との共存関係,両者の責任の競合関係の法的な処理が問題となり,その刑法的解決を目指すのが本研究の趣旨である。例えば人身事故が生じたとき,その刑法的な責任追及をどのように行うことができるのか,その要件はどのようなものか,責任追及の限界はあるのかなどが問題となる。この場合,部分的な自動運転の場合,完全な自動運転の場合などにより状況を区分けした上で,自動運転自動車に乗車し,使用している者の刑事責任,自動運転自動車を販売した者及び自動運転自動車を製造した者の刑事責任がそれぞれ検討されなければならない。いずれにしても,わが国の法制度が制定法主義,法律主義の法制度であり,ガイドライン等の一般倫理規範が法規範と同視可能となりうるようなコモン・ロー制度の米国における議論をただちに導入することはできない。この点を現在のわが国の比較法研究は十分にふまえていないものが多い。とりわけ罪刑法定主義の点から刑事責任については,このことを強く意識することが必要である。 また,わが国の過失犯論は,因果関係も正犯性の帰属の点でも,容易に背後者へと遡及する責任帰属の判断をとっており,ドイツにおいて有力に主張されている見解,自動運転自動車を「人」と同視する見解に立脚したとしても,ただちに販売者,製造者の責任が限定されることにはならない。 なお,道路交通法制からみると,わが国は,道路交通に関する条約のいわゆるジュネーブ条約(1949年)に加盟し,ドイツ(及び多数の欧州諸国)はいわゆるウィーン条約(1968年)に加盟している。しかし,ジュネーブ条約における議論は停滞しており,この点からの解決は,今のところ有効とはなり得ない。 以上から,短期的には,現在の刑事責任に関する議論を適用せざるをえない。
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Research Products
(2 results)