2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K12973
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松村 良之 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(客員研究員) (80091502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 麻奈子 同志社大学, 法学部, 教授 (00281171)
佐伯 昌彦 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (10547813)
村山 眞維 明治大学, 法学部, 教授 (30157804)
林 美春 千葉大学, 法政経学部, 助手 (50292660)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 刑事法学 / 社会系心理学 / 教育系心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、刑法理論の根幹的な概念であるとともに人々の社会認識の基本的枠組みでもある「責任」「非難可能性」の概念を人々がどのように理解しているかを,心理学における帰属理論の枠組みを用いて明らかにすることである。本年度まず、文献的研究によりつつ、刑罰判断を行う心理過程のなかで、行為者の自由意思に関する認知が果たす役割・意義について、関連する心理学の諸理論を整理しつつ検討した。とりわけ、原因帰属や責任帰属、応報的公正といった諸研究において、行為者の意思に関する認知の在り様がどのように位置づけられているかについて整理をした。また、そのような行為者の意思を判断過程に組み込むことの意義を理解するために、進化心理学の成果を参照した。その結果を踏まえて、発達心理学的な概念発達についての研究よりも、成人を対象にした社会心理学的研究を先行させることにした。 新聞記事、ネット上の議論、他調査の再解釈の結果を参照すると、人々の法人処罰への欲求は非常に強いことが確認された。それが、人間以外のものにmental stateを想定する人間の認知的ヒューリスティックスとどう関連するかを既存の他調査の再解釈を通じて検討した。その結果によると、集団、組織について集合主義的理解の強い人々が法人への非難可能性を高く見積もっている。また、責任、非難可能性の概念獲得を明らかにするためには、発達的な観点からも人間以外のものにmental stateを想定することがどういうことなのかという問題を取り扱うべきことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、研究分担者の連携が良く、おおむね順調に研究計画が進展している。社会心理学的な責任帰属研究を踏まえた研究を、発達心理学的な研究調査(判構造化面接)に先行させることにしたのも、研究全体の進行という観点から適切な判断である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、発達心理学的な概念獲得という観点からの研究(半構造化面接他)を行う。 また、責任帰属研究を基礎とした法人の刑事罰についての研究では、ロボット法学の議論などを参照しつつ(その典型である自動化運転に関わる法的問題については、事故状況での正当防衛、緊急避難に相当するアルゴリズムの責任が議論されている)、人間以外のものに帰責される心理的プロセスについて調査検討する。 さらに、それを踏まえて、人々が法人の「処遇」(法人にどういう刑罰を想定しうるか)をどう考えているかについての調査のリサーチデザインを検討する。
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Causes of Carryover |
発達心理学的調査を後回しにし、帰属理論に基づく研究を先行させたために、人件費・謝金、物品費、その他の経費が従前に予定したほどにはかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の発達心理学的研究調査に用いられる予定である。
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Research Products
(4 results)