2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K12973
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
松村 良之 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (80091502)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木下 麻奈子 同志社大学, 法学部, 教授 (00281171)
佐伯 昌彦 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (10547813)
村山 眞維 明治大学, 法学部, 専任教授 (30157804)
林 美春 千葉大学, 法政経学部, 助手 (50292660)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 刑事法学 / 社会系心理学 / 教育系心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 「法人の刑事罰」について、しろうとと法律専門家の認知を比較することを通じて、責任についてのしろうと理論を解明することができるであろうという予測のもとに、別途行われた一般人と法律専門家を対象とする調査結果の分析を行った。それによると、法律専門家も一般人と同程度に法人処罰(それは、伝統的な刑法理論とは反する考え方である)に賛成であること、法人に対する刑事罰と行政処分(例えば、営業停止)とを別のものとしては考えていないこと、法人罰について、抑止とか応報とかの観点ではなく、より拡散的な刑罰の観点から支持されていることを見いだした。つまり、処罰感情は、法律専門家ですら合理的にコントロールできない感情なのであり、人間の心理に深く根ざすものである。この研究結果は29年度、「責任」についてのしろうと理論を明らかにする鍵となる知見である。 2 「量刑・処遇モジュール」については、昨年度に引き続き、人々の責任判断過程における自由意思の位置付けについて整理するために、アメリカにおける自由意志信念に関する研究状況を概観した。また、責任の実態についてアプローチするため、アメリカにおける少年の刑事責任をめぐる裁判例を切り口として、発達心理学や脳神経科学の知見についても評価・検討を加えた。その結果、自由意思というのは心理学的には幻想であり、それを字義通り受け止めれば、自由意思に基づく行為ゆえ、その道義的責任を問うことができるという、刑罰の根拠は失われるであろうことが明らかになった。「責任を問う」ことの代替的方法としては、アメリカの刑事司法の例を参照すれば、課題解決型の裁判所(たとえば、DWI Court―飲酒運転に特化した裁判所―による処遇があり得るであろう。 3 責任主義について、ロボット法学の知見(自律的に学習するロボットと法的責任。とくに、自動化運転)について、理論的な整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発達心理学的な概念獲得という観点からの研究を除き、研究代表者、研究分担者の連携もよく、おおむね順調に進展しているが、発達心理学的な観点からの研究は、具体的なリサーチデザインの困難と、実験参加者の確保の困難から、予定よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の2本の柱である、「法人の刑事罰」と「量刑・処遇モジュール」については、さらに研究を進展させる。そして、上記の2本柱と、ロボット法学の知見を踏まえて、Web調査で、「責任」についてのしろうと理論を明らかにしたい。それと平行して、発達心理学的な研究の進展を図る。
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Causes of Carryover |
「法人の刑事罰」については、質問票調査を行ったが予想より経費がかからなかった。発達心理学的研究については、当初予定していたリサーチデザインの実行がそのままでは困難であり、28年度中に完了しなかった。そのために、人件費・謝金、物品費、その他の経費が従前に予定したほどにはかからなかった。 分担者木下が、本科研の使用とは別に上京することが多く、その際に研究打ち合わせを行ったので、旅費も節減することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27、28年度の研究を補完すべく、29年度にはWeb調査を行う予定である。そのために用いられる。また、リサーチデザインを工夫した発達心理学的な調査にも用いられる。
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Research Products
(2 results)