2015 Fiscal Year Research-status Report
北アフリカにおける会社法―シャリーアとの関連において
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15K12975
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
弥永 真生 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (60191144)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 会社法 / シャリーア / 北アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
北アフリカ諸国の世俗法(=制定法)が、旧宗主国の法律及びシャリーアの影響を受けている可能性があることに着目し、会社法制を題材にそれを裏付けるための調査を行った。具体的には、株式会社に関連するシャリーアの考え方を概観し、とりわけ、法人格及び有限責任に対するシャリーアの立ち位置を知るための資料を収集し、かつ、イスラム法国における世俗法とシャリーアの関係を会社法制との関係の整理に着手した。 本年度は、第1に、北アフリカ諸国の商事法の特徴を調査した。これにより、チュニジアやモロッコなどは、旧宗主国であるフランス法の影響を強く受けている一方で、コモン・ロー系の国々では民法典は制定されていないものの、会社法あるいは会社法を含む商法典は制定されていることを確認した。 第2に、北アフリカ諸国の商事に関する世俗法とシャリーアの関係を調査した。これにより、商取引につきシャリーアが有する意義は、イスラーム圏諸国の間でも異なるが、北アフリカ諸国は、広く西欧の法系(フランス法)に従っている国ということができ、商事法についてのシャリーアの影響は小さく、西欧法を継受する過程において、シャリーアとの抵触が問題視されることは、ほとんど、みられなかったようである。もっとも、エジプトなどの憲法には、法(立法)の源泉条項が設けられており、これが、どのような意味を持つのかという点が今後の研究課題であるが、商事と民事とを分け 、あるいは、必要性に着目して、シャリーアの例外を認めることが、商事法との関連では、裁判上も行われている。 第3に、イスラム法国であり、経済活動の推進に積極的であり、かつ、英国法の影響を強く受けている可能性があるマレーシアの法制を調査する一方で、シャリーアにおける組合(及び会社)に関する議論を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象としているチュニジアやエジプトの治安が悪化し、その結果、現地に赴いて、資料集することが困難となっている。しかし、シャリーアについての文献の所在を確認し、日本から資料を発注しており、資料収集は進んでいるし、当該資料の分析も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に、調査対象国の資料の収集を継続し、社会情勢が落ち着いたら、現地に調査に赴く。 第2に、筑波大学のチュニス・オフィスを活用して、情報収集を進める。 第3に、エジプトを年に数回訪問している筑波大学の同僚の協力を得る。 以上に加えて、かりに、チュニジアやエジプトの治安が十分に好転しないときには、より社会情勢が落ち着いているモロッコを調査対象とすることとする。
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Causes of Carryover |
海外調査を予定していたが、調査対象国の社会情勢の不安定さのため、海外調査を延期することが適当であると判断されたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初、予定していた調査対象国の社会情勢が安定した場合には、当該国に海外調査に行く旅費に充てるが、安定しない場合には、イギリス、マレーシアまたはドイツなどに所在する、イスラム諸国の文献を多く所蔵している図書館において資料収集を行うための旅費に充てる。 また、文献の購入費及びイスラーム法関連の研究補助者に対する謝礼に充てる。
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Research Products
(1 results)