2016 Fiscal Year Research-status Report
「グローカル」ガバナンスの研究―貿易自由化、世界標準・規制、地方再生―
Project/Area Number |
15K12994
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
遠藤 乾 北海道大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授 (00281775)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グローカル / ガバナンス / グローバル / ローカル / 地方 / 北海道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「グローカル・ガバナンス(Glocal Governance)」という概念を掘り下げ、政策体系の実質化を試みるものである。具体的には、TPP(環太平洋経済連携協定)などの自由貿易レジームと、地方、とりわけ研究代表者の地元である北海道における農業・医療・介護を結び、その間の緊張関係と調和可能性を試行的に探求してきた。参照するのは、長年研究してきた欧州連合(EU)、特にその規制力(Regulatory Power)であり、そこでのグローバル=ローカル関係のマネジメントに焦点を当て、比較の視座から政治学的に考察している。本研究はさらに2点で含意を汲み取れるのか見極める。一つは思想的に「グローカル」の理念的奥行きを検討すること、もう一つは政策的に、地域主義やグローバル化などの相互依存ガバナンスのなかで地方の生き方への含意を探ることである。 2年目は、北大公共政策大学院でグローバルガバナンスの授業を拡充し、そのなかで、「グローカル」ガバナンスの側面を強調しながら、実験的な授業を推し進めたことが実績として挙げられる。 また、北海道庁と連携し、グローバル人材育成に関する委員会を立ち上げ、その座長として、北海道における「グローカル」の現況を精査し、提案をとりまとめた。トピックは、TPPと北海道農業から激増する北海道観光まで多岐にわたったが、グローバルとローカルの接続を可視化して考察する良い機会となった。 さらに、フランスなどの田舎を回り、グローバル化とローカルの場とが交錯する場を、比較考察するための現地調査を行った。 最後に、北海道を中心に、地方議員を集めて開催した北大公共政策大学院サマースクールの卒業生とコンタクトを取り、地方に目を向けたときに眠っているグローバルな資源に注意を喚起したうえで、交流を図れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度でとりわけ力を入れたグローバルガバナンスの授業では、北海道とのつながりを意識し、慣行や食料などの観点から、ゼミ生と協働しながら、新しいフロンティアを開拓したことである。北海道というある種の本場において非常に有益な建設的議論ができたと考えている。 北海道庁と連携しているグローバル人材育成に関する委員会では、道の貿易状況から留学生の送り出し受け入れ態勢にいたるまで体系的に考え、北海道の地に根ざして、「グローカル人材」の育成にウィングを伸ばす良い機会になった。 さらにサマースクールに参加した地方議員とフォローアップすることで、ローカルな場にグローバルがどう展開しているのか、再考する機会を持てた。 最後に、フランスへの現地調査を行った。そこから、ガバナンスを超えて、政治争点・運動化する政治的ダイナミズム、つまりポリティックスについて考えていく必要を痛感した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の大幅な変更は必要ないが、上記の成果を受けて、グローカルに関する論点整理を文章にしていきたい。また、海外、とりわけヨーロッパにおける調査や類似の研究との接点をさらに厚くし、考察を東アジアにも射程を広げ、北海道の事例に還元する予定である。
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Research Products
(25 results)