2016 Fiscal Year Research-status Report
規範受益者から保護者へ:アジアの海洋安全保障を事例として
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15K12999
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
畠山 京子 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (90614016)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 現実主義 / 構成主義 / 日本 / 安全保障 / 軍事支援 / 南シナ海 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度は、引き続き二次資料の収集、整理を行った。研究の途中であり理論的なフレームワークの構築も完成していなかったが、経過報告もかねて国内(2度)および海外の学会(1度)にて報告を行った。また、研究テーマである南シナ海紛争に特化したシンポジウムでも発表(1度)を行った。研究途中段階での発表ではあったが、フロアからのフィードバックにより、新たな視点を多く得ることができた。また、南シナ海紛争の当事者であるベトナムおよびフィリピンを訪問してインタビューおよび情報収集も行った。フィリピンでは、防衛関係者に対してセミナーを開いた。両国において、学者をはじめ防衛関係者とも意見を交換することができ、日中間の視点で見ていた南シナ海問題を新たな視座から見ることも可能になった。 学会発表やインタビューの結果、南シナ海問題は、中国の軍事的台頭によるパワーバランスの変化といった単純な問題ではなく、規範や秩序が絡んだ問題であることが推察された。また、日本の南シナ海問題への積極的な関与の背景には、尖閣諸島を巡る領土紛争ではなく、規範や秩序変更への懸念といった非物質的要因が働いていることも観察された。これは、今後、規範という非物質的要因から研究を進めていく上で大きな収穫となった。 また、日本の選好の変化について非物質的要因から論じた本の書評を1本、規範から日中の国際平和協力を論じた論文1本、日本のアジアにおける秩序形成に関する論考を一本出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、南シナ海を舞台に軍事的に台頭する中国と軍事支援を開始して積極的な関与を始めた日本を事例として、構成主義と現実主義を横断する理論的枠組みを構築することである。パワーバランスに主眼を置く現実主義(新現実主義も含む)だけでは国家行動を上手く説明できないことを示し、「規範の変更」という構成主義的視座を取り入れることにより、より適切に地域における国家行動を説明することを企図している。しかし、非物質的要因である規範(の変更)は、証明することは困難であるため、理論的枠組みの構築には手間取っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、規範とパワーの双方が決定要因となるような構成主義と現実主義の中間に位置する理論的枠組みを構築するつもりであった。しかし、日本の行動は、パワーバランスや利益の最大化という観点からでも説明不可能ではないため、規範要因を分析の視角に取り入れても、必要条件として枠組みを構築することにならない。そのため、今後は、少し視点を変え、日本の行動を3つのパターンに分けて説明することを試みるつもりである。
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Causes of Carryover |
実際は、調査旅行を行ったため全額使い切り(10万以上の不足分あり)だったが、残った金額が7481円と中途半端だったため、次年度の交付金額が振り込まれてから、旅費の精算を合わせて行うことにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画通り、執行予定。
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