2016 Fiscal Year Research-status Report
米国の保健外交政策における民間財団の影響に関する研究
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15K13001
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
野口 和美 神戸女子大学, 文学部, 教授 (70552925)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際保健外交 / 民間財団 / ガバナンス論 / 開発援助 / 官民連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年12月の海外研究協力者によるワシントンDC及びニューヨークでの国際保健活動に関係する米国民間財団の聞き取り調査により国際保健外交政策策定に関わる民間財団の役割について次のことが明らかになった。 1.国際保健外交政策策定に関わっている財団の種類は、助成金提供団体、運営財団、ハイブリッド財団(助成金提供及び運営の両者を実施する財団)である。 2.国際保健外交政策策定への民間財団の関わり方は様々であるが、寄付に関する政策提言、政策提言を行う財団への情報提供や技術的なトレーニングや能力開発、影響の大きい財団の責任者が直接的に政策策定者に働きかける、マルチセクター間における対話や会合に参加をする、実際に政策実現が可能であることを示すために新しい取組を試す、官民連携プロジェクトに参加するということが挙げられる。また、政策に関係する様々な利害関係者を招集し、意見交換及び共同で戦略を練るために、中立的な話し合いの場をつくる。米国政府が実施している国際保健外交政策ガバナンスに参加する。 世界エイズ・結核・マラリア対策基金(略称グローバルファンド)や米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)への政策提言をする国や地域への支援が挙げられる。 3.国際保健外交政策策定に民間財団の関わりが重要である理由としては、次のことが明らかになった。民主主義制度の中で、政策策定における非営利団体の声は重要である。政策策定者及びスタッフは、必ずしも、すべての政策事項の専門家ではないので、専門家が必要である。政策策定者らが支持者たちに耳を傾けることにより、支持者たちから策定者の政策決定に対して政治的な支援を受ける。米国政府の資金は非営利団体よりもより大きいので、民間財団は、公的セクターの資源を解放するために、自分たちの影響力を活用する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績に明記したように、ワシントンDC及びニューヨークを拠点とする米国の民間財団への聞き取り調査を行ったが、平成29年の米国の民主党から共和党政権の交代により、国際保健外交政策の変化を調査する必要も出てきており、且つどの民間財団が、米国の国際保健外交政策に重要な影響を与えているのか再考する必要が出てきた。これらの動向に伴い、どの民間財団に聞き取り調査を実施するべきか再考する必要も出てきた。今後、海外研究協力者の協力を得て、政権交代の影響も含め、聞き取り調査を行う対象の民間財団を検討し研究調査を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、米国の政権交代後、未だ日が浅く、同国の国際保健外交政策の変化を調査することは難しいかと思うが、米国の政権交代に伴う国際保健外交政策の変化及びその政権交代の民間財団の影響を含め、研究調査を進める。また、米国政権交代の民間財団の国際保健政策策定への影響の変化や官民連携関係の変化を調査研究する。平成29年の米国の国際保健に関する予算の大幅なカットに伴い、民間財団との連携への影響を研究調査する予定である。 海外研究協力者の協力を得ながら、米国の現政権への交代の国際保健外交政策の変化と民間財団との連携への影響について聞き取り調査を行う予定である。 最終年度であるので、3年間の研究成果のまとめを研究報告書として作成する計画である。
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Causes of Carryover |
米国のトランプ政権の国際保健外交政策は、オバマ政権時の政策からどのように変化しているのかについて検討の時間及びどの米国の民間財団に聞き取り調査を実施することが適当であるのかについて検討する時間が必要となったため。民主党政権から共和党への政権交代後の国際保健外交政策における民間財団の影響の変化に関する調査については、交代後に聞き取り調査を実施した方が高い研究成果を得ることが出来ると考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の米国研究協力者とのインタビュー調査及び国際学会参加の旅費等または国際保健外交や民間財団に関する書籍購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)