2018 Fiscal Year Annual Research Report
Social value in history of economic thought: mainly in Britain in the 19th century
Project/Area Number |
15K13008
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
柳澤 哲哉 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (90239806)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マルサス / 家族 / 功利主義 / 救貧法 / シーニア / 社会的価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、家族責任やマルサス主義的結婚システムなど近代家族の形成という観点からマルサスの先駆的役割とその影響を考察し、社会の基本単位である家族の観点から社会的価値の考察を論文にまとめる作業を主に行った。 マルサスは家族を個人と社会を媒介する位置に置き、社会的功利を増大させるうえで近代家族の果たす役割を重視した。家族は、第一に予防的妨げを作動させて人口を調節する役割によって、第二に嗜好や性格形成、教育を授ける役割によって、個人と社会を媒介する。家族を形成するためには、労働者個人は自らの生活水準の低下や労働の増大を受け入れるが、家族の形成や子供の養育それ自体が幸福の源泉となるので、個人的にも社会的にも功利を増大させると考えていた。理想的な家族の中では教育を付与する役割まで親が担うものと想定していただけでなく、合理的な判断のもとで家族を形成するために核家族の危機から家族を守る救貧政策を主張していた。マルサスは19世紀に広まる中産階級的な家族像を先駆的に提示した論者と評価できる。シーニアの救貧法論にも近代家族の戦略的役割について同様の認識がある。 研究成果は「知的源泉としてのマルサス研究会」(7月,於福岡大学)において「マルサスとシーニアにおける家族」として報告し、それをブラッシュ・アップしたものを「マルサスにおける家族と救貧法」として柳田芳伸・姫野順一編『知的源泉としてのマルサス人口論』(昭和堂, 2019年)に寄稿した。
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