2015 Fiscal Year Research-status Report
パレート効率な自治体連携の可能性と限界-マッチング理論による地方創生-
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15K13011
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大澤 義明 筑波大学, システム情報系, 教授 (50183760)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 隆史 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (90466657)
栗野 盛光 筑波大学, システム情報系, 助教 (90732313)
川島 宏一 筑波大学, システム情報系, 教授 (00756257)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マッチング / 地方創生 / メカニズム / 広域連携 / パレート効率 / 被災自治体 / 安定性 / オープンデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
4名体制による2年間のプロジェクト初年度の概要となる. (1)現場データの収集:派遣職員の効率的なマッチングにむけて,東日本大震災被災自治体である宮城県庁(9月),宮城県石巻市,南三陸町(7月),そして派遣元である神奈川県相模原市(3月)へのヒアリングを実施した.また,派遣職員制度スキームを構築している総務省へも2度(9月,3月)のヒアリングを実施した.これらにより収集した情報により,派遣職員における職務内容の齟齬(ミスマッチ)の状況を明らかにした.派遣職員の派遣元自治体の距離について定量的に把握した. (2)理論モデルの構築:東日本大震災被災自治体への派遣職員スキームを事例に,2者連携(独自の自治体間協定によるスキーム),複数連携(全国市長会・全国町村会と総務省によりスキーム)のマッチング効率性,派遣決定に係る時間,実際の事務手続き量などを比較検討し,参加自治体数のスケールメリットを吟味した.また,派遣職員元自治体の人口規模・職員規模等,さらにはマッチング自治体間距離の影響を分析することで,自治体規模によるスケールメリットや距離抵抗も把握した. (3)自治体との連携強化:被災3県の自治体,UR都市機構,北海道網走郡津別町と連携を深めた.特に,津別町では,千葉県船橋市との連携構築の事例について情報を収集し,また津別町現地における広域連携について調査・議論し,社会還元を積極的に行った. (4)成果発表:国内外も含め学会発表を多数行った.特に,1年間の成果報告ならびに研究進捗状況を,北海道網走郡津別町にて開催された研究会で発表した.当グループメンバー4名に加え最適化,地理学も含め多岐にわたる分野の25名の研究者が参加した.さらに津別町職員も参加することで,研究内容を理論的にかつ実証的に深めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)理論研究:マッチング理論を自治体職員派遣に適用する新たな試みである.研究期間の短さから査読付き論文誌への発表には至っていないが,そこまでの道筋となる理論構築の基盤に関して多数の研究発表を行った. (2)実証研究:東日本大震災被災自治体である宮城県石巻市,岩手県南三陸町,そして派遣元である神奈川県相模原市へのヒアリングを実施することで,自治体現場の生の情報を着実に収集できた. (3)社会実装:派遣職員の効率的なマッチングという新たな制度設計に向けて,北海道網走郡津別町において,視察研究発表会を行い,理論に関しては異分野の研究者と,実証に関しては津別町行政担当者と忌憚なく情報を交換した.また総務省において被災地方自治体に対する人的支援の取組を企画・実施している同省公務員課の担当責任者と,現行の自治体間人的支援の課題とマッチング理論に基づく検証を踏まえた今後の制度改善の方向性について意見を交換した.
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度が最終年度となり,それを踏まえると次のようになる: (1)理論研究:地理的近接性の条件,ハード整備とソフト整備との交換,といった条件変化に対して,マッチング理論の適用範囲の拡張性について検討する.広域連携も含めて地方分権での市町村体制の意義を追求する. (2)実証研究:現地視察やヒアリングを繰り返し実施し,自治体連携の課題を体系的に整理する.またアンケート調査により,派遣職員が実際に行う業務と,職員の職歴に関する齟齬を定量的に把握し,マッチングでの情報粒度等を明らかにする.なお,今後予想される,熊本地震での職員派遣に関しても情報収集する. (3)社会実装:現行制度を批判的に捉え,東日本大震災被災3県(岩手,宮城,福島)の県庁担当者を通して,アンケート調査を実施する.そしてその結果を通して,東日本大震災時に総務省が自治体へ提示したマッチングの有効性を検証する.さらには企業が保有する人材情報を含む,よりオープンかつ一元的な人材カタログの利用可能性も含めて,マッチング理論の実用性を検証する. (4)情報発信:海外研究者とインターネットと適宜情報交換を行いつつ,研究成果を学会発表,論文投稿することで国内外を問わず社会還元を積極的に行う.
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Causes of Carryover |
研究遂行上,東日本大震災の被災自治体とのヒアリング,研究発表等が不可欠である.大枠における,研究スケジュールの変更はないが,打合せのための出張や成果の学会発表が次年度となったため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定どおり,被災自治体や学会(国際会議も含めて)への出張費用(旅行費用)に充当する.
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