2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K13037
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
柳田 卓爾 山口大学, 経済学部, 准教授 (10303041)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自己株式 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己株式の取得等が、収益性や成長性に与える影響を考察するための準備作業として、平成28年度においては、大規模企業の自己株式取得行動の決定要因を明らかにするための実証分析を試験的に実施し、未公表のペーパー『大規模企業の自己株式取得行動―2015年3月期データによるクロスセクション分析―』(2016.9.27)を執筆した。このペーパーでは、東証一部全社の一般事業会社のうち、3月期決算企業であり、総資産規模が6,000億円以上の大規模企業を対象に分析を行った。分析対象データは、2015年3月期のクロスセクション・データである。このデータを用いて、ロジスティック回帰分析を行い、自己株式取得の決定要因を明らかにすることを試みた。また、ペイアウト政策としての自己株式取得行動の意味を、理論的に明らかにするために、ディスカッションペーパー『ペイアウト政策としての自己株式取得』(2017.3.31)を執筆した。このディスカッションペーパーは、自己株式取得の規制緩和の歴史的展開を明らかにすることを目的としている。自己株式取得の規制は、近年に至るまで、絶対禁止、あるいは、原則禁止・例外的許容の時代が続いていた。しかし、平成13年商法改正により、原則自由の時代へと転換した。取得した自己株式を、期間の定めなく保有することをも認める改正であったので、金庫株の解禁とも呼ばれた。例外的許容→原則自由、そして、更なる改正を通じて、自己株式取得の性質が、どのように変質していったのか。この点に焦点を絞り、ディスカッションペーパーでは議論している。以上2本のペーパーと、平成27年度執筆のディスカッションペーパー1本は、実証的、理論的見地から、平成29年度に行う予定の「自己株式取得等企業の経営成果の実証分析」の準備作業との位置づけが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、平成29年度に行う「自己株式取得等企業の経営成果の実証分析」実施に用いる変数や、仮説の準備を行うという位置づけであった。試験的ではあるものの、実証分析を実施し、検証すべき仮説を決定し、課題を明らかにすることができた。特に、同時決定バイアスの問題を解決することが不可欠であることが分かった。また、自己株式取得の歴史的展開を調査することを通じて、自己株式取得行動の性質に変化が生じている可能性が示唆される結果となった。この点は、実証分析の結果を考察する上で、重要な課題を提示している。以上を総合的に判断して、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度においては、当初の研究実施計画に従って、研究を進める。すなわち、「前年度までの研究成果を前提として、理論モデルを構築し、自己株式取得等企業の経営成果の実証分析を行う」。
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Causes of Carryover |
データベース作成業務補助などに予算を計上していた。しかし、試験的に行った実証分析の分析期間を単年度のクロスセクションとしたため、扱うデータ量が減り、補助への支出を節約することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(25,286円)は、予定しているネットリサーチ(90,000円)の一部として利用する予定である。学会等や専門家から専門知識に関する助言を得るために、学会参加費等(20,000円)や出張費(東京出張130,000円、大阪出張60,000円)を計上している。また、実証分析のために必要なデータベースを利用するために、日経テレコン等データベース利用料金等(200,000円)を計上している。
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