2016 Fiscal Year Research-status Report
産業集積における事業転換の研究 -脱伝統産業における地域の企業家の役割を中心に-
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15K13038
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
出口 将人 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40305553)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経営戦略 / 産業集積 / 事業転換 / 企業家 |
Outline of Annual Research Achievements |
産業集積レベルで事業転換を実現した地域として、いくつかの地域(浜松、岡山など)について予備的な調査をおこない、資料や現地調査でのアクセシビリティなどを考慮して、新潟県燕三条地域および長野県岡谷諏訪地域をリサーチサイトとして取りあげることを決定し、これらの地域にかんする文献資料調査ならびに公的機関、業界団体や資料館などでの聞きとりを中心とした現地調査をおこなった。 これらの調査の結果として、燕三条地域については、生産者だけではなく、生産から貿易に軸足を移し、同地域の金属洋食器産業の礎を築いた捧吉右衛門に代表されるように、商業者(とくに三条地区の)が地域の企業家として事業転換に大きな役割を果たしていたことが明らかになった。 岡谷諏訪地域については、昭和初期以降の生糸から精密機械(金属加工)への転換と近年の精密機械から電子デバイスへの転換の2度の事業転換があったとされている。このうち、前者については、たしかに生糸生産の機具の生産技術などを生かすことで精密機械への事業転換がおこったことは確かである。しかし、後者については、一般にいわれているほど進行しておらず、むしろ近年の同地域の事業転換は、品目ではなく、取引関係を中心とした事業システムのレベルで起こりつつあるもの、より具体的には、かつての大企業を頂点としたピラミッド型の取引関係からの脱却として起こりつつあるものとしてとらえる方がより適切であるとの認識にいたった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究のレビュー、調査対象へのアクセシビリティなどを勘案して、新潟県燕三条地域および長野県岡谷諏訪地域にリサーチサイトを絞りこみ、それぞれについて資料の収集、分析ならびにインタビューを中心とした現地調査をおこなった。その結果、両地域にかんしては、先行研究や新聞記事などで述べられていることと現地の状況や人々の理解には少なからず違いがあることが明らかになった。このため、さらにフレームワークの再検討や追加的な調査が必要となり、当初予定されていたディスカッションペーパーの作成、発行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
燕三条地域および岡谷諏訪地域の2つの地域にかんする調査(文献、現地)を継続する。 燕産業地域にかんしては、同地域の事業転換に大きな影響をおよぼしたと考えられる地域の企業家として、洋食器の生産から卸売業に軸足を移した企業や三条の商人にフォーカスして、これらにたいする調査をおこなう。 岡谷諏訪地域にかんしては、生産品目だけではなく、産地の事業システムのレベルの転換にも着目して調査をおこなう。
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Causes of Carryover |
主に以下の2つの理由によるものである。一つは、リサーチサイトの絞りこみを公表資料の調査分析でおこなったために、予定よりも旅費が少なく済んだこと、二つは、インタビューデータの文字起こしにかかる費用が予定よりも安く済んだことである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本来前年までにおこなう計画であったにもかかわらず、諸般の事情で実施できなかった2つのリサーチサイトへの現地調査(いずれも複数回)、そこでおこなう関係者へのインタビュー・データの文字起こしなどに使用する予定である。
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