2015 Fiscal Year Research-status Report
大学への民間的発想・手法導入の有効性の検証と自律的活用のための指針の開発
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15K13048
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Research Institution | National Institution for Academic Degrees and University Evaluation |
Principal Investigator |
田中 弥生 独立行政法人大学評価・学位授与機構, 研究開発部, 教授 (50372404)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武市 正人 独立行政法人大学評価・学位授与機構, 研究開発部, 教授 (10011165)
太田 康広 慶應義塾大学, その他の研究科, 教授 (70420825)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内部質保証 / 民間的手法 / 高等教育政策 / 新自由主義 / 大学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、高等教育政策レビューおよび教育機関へのヒアリングを行った。まず高等教育政策レビューであるが、これは、民間的手法・発想の導入が謳われた政権やその背景・理由を探ることが目的である。ここでは、民間的手法・発想を規定する枠組みとして、新自由主義の考え方に着目し「成果、競争、評価、顧客」等のキイワードを抽出した。そして、新自由主義的な政策が顕著になった中曽根政権から現安倍政権について、行政改革や経済政策、規制改革を踏まえたうえで、高等教育政策における新自由主義的なキイワードを拾い出し分析した。 教育機関へのヒアリングについては、大学評価・学位授与機構で開発した「大学教育の内部質保証ガイドライン案」を活用し質問票を作成した。このガイドラインがTQM的な発想と共有する点があり、民間的手法の具体例ととらえることができると考えたからである。しかしながら、総合大学から事例を見出すことは難しかった。そこで、教育目的が明確で、その成果が学生数や収入に直接的に影響をもたらす教育機関に着目した。すなわち、ここでは、専門学校、専修学校に着目し、美容系、IT系、資格取得系など複数分野の専門学校に着目し、これらに対してヒアリングを行った。教育目標が具体的で明確であり、データをもとに教育成果を頻繁に測定し、その結果をもってトップが改善を命じたり資源の再配分を行っている状況が明らかになってきている。ただし大学と直接比較することは適当でないことから、さらなる議論と思考が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は初年度にあたり、当初計画において、政策レビューと事例分析のためのヒアリングを行うことになっている。上述のように教育サービスの質保証という観点から大学以外の教育機関に着目したことは計画外であったが、新たな視点を提供するという意味で効果的であったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
高等教育政策については、橋本政権について分析を付加的に進めるところである。また、文科省レベルの施策についても着目する必要があるが、中曽根政権から現政権における中教審について分析を進める。ここではテキストマイニングなどの分析手法を用いる予定である。 内部質保証の事例分析については、調査過程でいくつかの課題が浮上している。第1に内部質保証ガイドラインそのものの再確認をする必要があるという点で、特にその8要素の構造関係を明らかにする必要がある。次に、専門学校のヒアリング結果と大学とをどう関連づけてとらえることができるかである。そのためには専門学校のヒアリング結果を整理した上で、その論点を抽象度を上げて捉える必要がある。 また、今年度は大学の事例ヒアリングを行いたいが、先のガイドラインを全うしている事例がないため工夫が必要になる。
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Causes of Carryover |
研究会開催費用を節約したために差額が生じた。初年度は文献整理、政策レビューなどの準備作業が集中したため研究会(旅費等)の回数が少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は、研究会による議論が重要になること、地方大学へのヒアリングなどが予定されていることからこれらに昨年度の剰余金が充当されることになる。
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