2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13062
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
浜田 宏 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40388723)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 準拠集団 / 相対的剥奪 / δ区間モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度には,2015年SSPデータを利用して,拡張δ区間モデルの検証を行った.拡張δ区間モデルは,準拠集団選択プロセスをモデル化した理論で有り,従来の所得分布一次元に基づくタイプから,年齢分布との同時分布を考慮した拡張型により,他者所得予想値を説明する.モデルの基本仮定は以下の通りである.1. 二次元の確率変数(X, Y)を考え,その同時確率密度関数をf(x,y)とおく.Xが年齢の分布を,Yが所得の分布を表している. 2. (x,y)で確率変数(X,Y)のそれぞれの実現値を表す.3. 年齢がxである個人は, 年齢が[x-δ, x+δ]の範囲内にある他者を準拠集団を選択し,準拠集団と自分の《所得》を比較する.4. 準拠集団の平均所得はXに対するYの条件付き期待値, E[ Y | x - δ < X < x + δ]で与えられる. 5. 収入に対する満足度は, 自分の所得yと準拠集団平均所得 y*=E[ Y | x - δ < X < x + δ]の関数として決まる: u(y, y*) 6. 収入に対する満足度は, y*が大きいほど減少する.
2次元に拡張されたδ区間モデルは,1次元のδ区間モデルの自然な拡張であり,基本仮定に大きな違いはない.ただし個人の特徴を表す分布として所得だけでなく年齢も考慮しているため,準拠集団の平均所得が単なるYの条件付き期待値ではなく, Xで条件付けられたYの期待値となる点に注意しなくてはならない.データを解析した理論的予想が正しいことが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論モデルだけでなく,ある程度データによる検証も進んでおり,予定通りの進捗と考える.具体的には次の成果を得た.
SSP調査で新規測定した「同世代の年収」は,拡張したδ区間モデルの検証に役立つ. 拡張したδ区間モデルに基づき,年齢と個人収入からδindexを簡単に計算でき,説明変数として使用できる. δ indexは相対的剥奪感と主観的幸福感を説明する変数として,有望である.
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Strategy for Future Research Activity |
今回のデータ分析では,次のような手順で理論値を説明変数として作成した.1.本人年齢$x$を基準に年齢が$x \pm \delta$である人々の収入をデータから取り出す.これが準拠集団の所得分布となる.2.年齢条件で取り出した準拠集団の所得分布から平均値を計算する.この値が準拠集団平均所得の理論値である3.準拠集団平均所得の理論値を全ての年齢のレンジで計算する.4.計算した準拠集団平均所得の理論値をデータ行列に代入する.このとき同じ年齢のユニットは同じ理論値を持つ.5.つまり,準拠集団平均所得理論値は年齢別集団のグル‐プレベルの固定効果である.この固定効果によって表現できないグループレベルの誤差をランダム効果で表す(個人レベルの誤差は個人レベルの統制変数・誤差項で表す)6.応答変数(回答者が述べた準拠集団平均所得)を理論値(固定効果)にLMEで回帰する.統制変数は全て個人レベルで加える. 今後は説明変数へのδインデックス代入だけでなく,構造推定を考慮したモデル化を検討する.これにより準拠集団理論の定式化と実証がさらに進展することが期待できる.
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Causes of Carryover |
実験サーバ用PCを購入しなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験サーバ用PCは仕様を確定後に28年度に購入予定.
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