2016 Fiscal Year Research-status Report
限界集落における近代資料のアーカイブ化を通した社会調査に関する実証研究
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15K13075
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Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
島岡 哉 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (80513895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
升田 法継 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (70736868)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 山村 / 近代資料 / 社会史 / モダニティ / 移動 / 交易圏 / デジタル・アーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、近代資料を所蔵する旅館等での地域調査、対象となる吉野郡を後背地とする和歌山県などの資料調査、山村におけるダム開発(電源開発)前に行われた社会調査データアーカイブ調査などを行った。前年度との研究・調査実施における相違点は2点ある。 1、資料の貸借許可を得られた点、所蔵資料数が申請時の把握よりも大量であることが判明した点。奈良県吉野郡上北山村河合「熊野路荘」所蔵の近代資料を閲覧のうえ、貸借契約を締結したうえ、ヒアリング調査を行った(研究分担者・升田法継准教授同行)。本科研申請時には、資料の持ち出しができないことを前提に置いた長期滞在型調査を念頭に置いていた。両日の調査時に、研究代表者および分担者の所属大学が福井にあること、研究の進展状況や機材の関係、研究代表者の病気療養などをご勘案賜り、貸借契約を締結し、資料をお借りして仁愛大学にて解読作業とデジタル化を行うことをご快諾いただいた。また、申請前に確認した資料数よりもかなり多い分量が所蔵されていることが確認できたため、まずは解読可能な資料をお借りし、解読を行った。 2、京都大学文学研究科社会学研究室所蔵「村落調査データベース」原本閲覧と利用の必要性が高まった点。熊野路荘所蔵資料の一部を見ただけでも、商圏・交易圏は、紀伊半島一円の広範囲にまたがることがわかった。そこで、奈良県吉野郡上北山村と密接な商圏(交易圏)を形成していた和歌山県、三重県などの村落調査報告書の解読、併用の必要性が高まった(昭和20年代~・臼井二尚教授時代の村落調査)。山村地域は戦後のダム建設により、村の構造そのものが変容しているところが多いため、同教室所蔵の資料はそれ以前の村落社会の生活を知るのに貴重なものである。ただし、データベースは個人情報保護の観点から非公開であり、松田素二教授より使用許可を得て、同教室にて原本の複写を続けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、調査の実施により、近代資料の解読、デジタルデータ化の試行は行えた。ただし、「9 研究実績の概要」で詳述したように、資料数自体が申請時想定よりも多いことや、商圏・交易圏の広さから、上北山村所蔵の資料以外を併用しないと全体像が描けないという研究上の難題が浮かび上がったことも確かである。研究計画の工程表自体を練り直す作業を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の推進そのものを、資料数を鑑み、広域にまたがる商圏・交易圏を解明していくために練り直す。また、近世史研究者、アーカイブの専門家、民俗学者などにもご助言・ご協力を賜りながら研究を推進していく必要が出てきたため、そのための作業をすでに始めている。 「9 研究実績の概要」で既述したように、長期滞在型調査ではなくなったうえ、さまざまな分野の研究者や専門家の助力を必要となってきた。そのため、申請時に記載した調査旅費が、人件費、謝金、データ保存用備品などへの変更が必要となる。
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Causes of Carryover |
近代資料を所蔵する旅館より、研究遂行上のご配慮を賜り、資料の貸借及び福井での作業を行うことになった。したがって、調査地への旅費や宿泊費を多く必要とする長期滞在型調査方法ではなくなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査旅費や宿泊費に充当する予定であった使用額を、主として以下の2つの用途に変更する。 1、他の学問領域の講師招聘・指導料をはじめとする、研究遂行のための人件費、謝金に充当する。2、デジタルデータ化に要する時間そのものが、対象とする資料数の増加により、申請時の想定より増えている。従って、専門性を必要としないレベルで行えるデジタル化は、本学の設備を使って行うための人件費に充当する。
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