2016 Fiscal Year Research-status Report
「55年体制」と日本型シティズンシップの形成: 丹下健三・花田清輝・大西巨人
Project/Area Number |
15K13077
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
亀山 俊朗 中京大学, 現代社会学部, 教授 (70507425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シティズンシップ / ナショナル・アイデンティティ / 丹下健三 / 大西巨人 / 花田清輝 / 55年体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年その揺らぎが指摘される戦後の日本型シティズンシップの確立期に注目し、その特徴を明らかにすることにある。そのために、1955年前後に戦後日本のシティズンシップがナショナル・アイデンティティとコスモポリタニズムを止揚するものとして構想され定着をみたとの仮説にもとづき,当時の先鋭的な表現者、とくに丹下健三(建築)・花田清輝・大西巨人(いずれも批評・小説)に注目し検討する。 2016年度は、丹下健三の建築の戦前・戦後にわたる一貫性を、収集した資料にもとづき明らかにし、社会政治研究会(5月13日於名古屋大学)においてその内容を報告した。 大西巨人については、50年代の批評を中心に資料を収集・分析し、日本社会学会大会においてその成果を報告した。また、昨年に続き二松學舍大学東アジア学術総合研究所共同研究プロジェクト「現代文学芸術運動の基礎的研究――大西巨人を中心に」のワークショップ(今年度のテーマは「大西巨人の現在――文学と革命――」)に参加し、近代文学の研究者らと情報交換をはかった。 大西巨人および花田清輝については、両者が関わった「記録芸術の会」が編集した『現代芸術』誌の収集・分析等を進めている。 シティズンシップ理論については、『福祉社会学研究』13号の特集「規範的探求の学としての福祉社会学の可能性」に寄稿した。また、福祉社会学会第14回大会(於奈良女子大学)におけるテーマセッション「シティズンシップとその外部:複数の排除、複数の包摂」のコーディネーターを務め、『福祉社会学研究』14号(2017年5月刊行予定)の同名の特集を編纂した。これらの活動により、シティズンシップ研究のフレームワークを固めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、当初の計画にあった1955年前後の代表的作品や諸運動の初資料についての収集・分析、関係者への聞き取りを進め、研究会・学会大会で成果の一部を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、引き続き資料収集・聞き取り調査を進め、成果を2本の学術論文としてまとめる。1本は「近代日本におけるシティズンシップの確立と変容」をテーマに、明治期以降のシティズンシップの範囲・内容・深度を概説する。この論文の枠組みを前提に、「55年体制と日本型シティズンシップの形成」をテーマとしたいま一つの論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
2016年度は、資料収集・聞き取り調査等について、他の用件と同時期に実施することができたので、旅費等の使用額が予定より少なかった。また、研究会・他大学の公開ワークショップ等での情報交換・聞き取りの機会が多く、謝金等の使用額が予定より少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、丹下健三らの建築作品等の現地調査により、旅費を執行する。また、現地で聞き取り調査により、謝金を執行する。大西巨人については、大西の出身地である福岡市文学館が資料を収集しており、研究を進める学芸員や関係者がいるので、福岡市での調査で旅費・謝金、テープ起こし費用等を執行する予定である。花田清輝については、東京の関係者への取材を行う予定で、旅費等を執行する。こうした取材等に必要な機材の準備も進める。
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Research Products
(2 results)