2017 Fiscal Year Research-status Report
「55年体制」と日本型シティズンシップの形成: 丹下健三・花田清輝・大西巨人
Project/Area Number |
15K13077
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
亀山 俊朗 中京大学, 現代社会学部, 教授 (70507425)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シティズンシップ / ナショナル・アイデンティティ / 丹下健三 / 大西巨人 / 花田清輝 / 55年体制 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦後の建築・文化・芸術運動について、各地の博物館等の展示・収蔵内容と建築や地区計画のあり方の関係について検討をした。17年度は新たに北海道のアイヌ民族博物館、北海道博物館、北海道立文学館ついて、シティズンシップ観の形成という視点から検討をすすめた。北海道のアイヌや植民に関する認識は、社会・文化・芸術運動を背景にここ数十年の間に何度か転換をみせており、近年新たな転換点を迎えようとしている。これは55年前後に形成された日本型シティズンシップのあり方を逆照射しているという視点で検討をすすめた。これら各地の公共建築物と、戦後の社会運動・平和運動を背景とした丹下らの作品の関係の検討も行っている。花田・大西らの活動については、「記録芸術の会」編集の『現代芸術』誌や大西の遺稿集等の検討を引き続きすすめた。また、北海道以外の各地の博物館等についても、展示・収蔵内容、建築・地域政策等を検討している。 シティズンシップ理論については、戦後の社会学、とくに1950年代の社会学研究におけるシティズンシップ観を検討し、論文「近代化と福祉 ―戦後家族社会学の含意を再検討する―」にまとめた。戦後の近代化論は、近代化が進めば封建性は克服されうると考えていたが、有賀喜左衛門らは「家」のような従来の制度が、近代化以降も人々の生活の基盤を支えるもの(換言すると社会的シティズンシップの内実)であったことを強調した。これらをシティズンシップ論の立場から再整理することにより、近代化と建築・文学・芸術運動の関係を検討する本研究の枠組みの設定をはかった。 また、福祉社会学会機関誌『福祉社会学研究』14号において、特集「シティズンシップとその外部――複数の排除,複数の包摂」の編集・解題を担当した。ここでは、歴史社会学や国際比較研究等をシティズンシップの枠組みで総括し、理論枠組みの洗練を目指した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
17年度は当初は最終年度として、成果をまとめる予定であったが、勤務校でのエフォートが諸般の事情により想定より大幅に増加するなどして、計画に遅れが生じた。そのため、18年度まで期間を延長して研究に取り組むこととした。 上記のように研究は進捗しており、とくに理論枠組みの検討においては論文等の成果を出している。18年度は実地調査等に時間を割ける予定なので、これまで検討した理論図式を参照しながら調査をすすめ、内容を整理していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、最終年度として、引き続き資料収集・実地調査、聞き取り調査を進める。その上で、成果を学術論文等の成果物としてまとめる。成果物では近代日本のシティズンシップの範囲・内容・深度を概説した上で、戦後の建築家や文学者の作品や主張と、実際の博物館・資料館・文学館等の建築や展示・収蔵内容、自治体等の都市計画や政策を対照しながら、「55年体制と日本型シティズンシップの形成」の具体的内実を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)