2016 Fiscal Year Research-status Report
司法改革後の弁護士の労働環境の変化と職務の特性がストレスに及ぼす影響
Project/Area Number |
15K13078
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
久保 真人 同志社大学, 政策学部, 教授 (70205128)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 弁護士 / ストレス / 司法改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、2015年度に引き続き弁護士を対象としたインタビュー調査をおこなった。この一連のインタビューを通じて、弁護士職務に特徴的なストレス因をいくつか抽出することができた。 ほとんどの弁護士が言及した要因は依頼者であった。相手方とトラブルになるのは織り込み済みであるが、依頼者とトラブルになるのは想定外で「後ろから鉄砲を撃たれる」のに等しく、理性的に対処できないなどといった意見が数多く聞かれた。また、なぜ依頼者との問題が深刻化するかについても、いくつかの意見があったが、弁護士事務所間の過当競争により、以前なら断っていたケースを受けざるを得なくなったことを理由としてあげる人も少なくなかった。 事務所で雇用されている弁護士(イソ弁)にとっては、事務所内の人間関係、特に経営者(ボス弁)との関係は大きなストレス源となっている。弁護士は自律した専門職なので、ボス弁との考え方の違いは、イソ弁にとって大きなストレスにつながる。就職段階で事務所を選択することは可能であるが、弁護士数の急増に伴い就職状況も悪化しているため、評判の悪い事務所であっても他に選択肢がなかったと述べた弁護士もいた。ここでも、弁護士を取りまく環境の変化が背景的な要因となっている。 ストレスを低減する要因についてもいくつかの示唆が得られている。弁護団活動や研究会など通常業務とは異なる活動に従事している弁護士から、日々の業務を離れて、弁護士を志した理由、子どもなど社会的弱者の人権や社会運動などに関わる活動に時間を割くことが、あらためて弁護士としての仕事の意義を再確認する機会となっていること、そして、それが通常業務のストレス低減につながっているとの話を聞くことができた。これらの活動は、休日に会合が行われることも多く、ワークライフバランス的に問題がないとは言えないが、達成感と効力感を高める方向で作用すると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
弁護士の現状は、都市部と地方で違いがあり地域差を考慮した調査が必要である。しかし、これまでに実施したインタビュー調査では、研究者の知己など紹介者の関係で、当初の想定とは異なり、近畿圏内と都心部の弁護士が中心となってしまった。
|
Strategy for Future Research Activity |
地方の弁護士を対象にインタビュー調査を継続する必要がある。その後、調査結果の分析を通じて弁護士のストレス因に関わる仮説生成のプロセスに着手する。さらに次年度以降に実施する予定の量的調査の準備を進めていく。
|
Causes of Carryover |
インタビューの対象者が、当初予定していたよりも近畿地方在住の弁護士が多くなり、旅費の残額が次年度使用額となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
偏りのないデータを得るために、地方の弁護士のデータを収集する。
|