2015 Fiscal Year Research-status Report
高齢女性の在宅療養を規定する社会構造的要因を可視化する国際共同研究
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15K13083
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
川畑 摩紀枝 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60177730)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高齢者 / 要介護状態 / 社会環境要因 / 質的研究 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は高齢者が要介護状態に陥る原因として社会環境要因に注目した。社会環境要因は国のマクロな社会環境の影響を受けるために、国際比較を行うことが効果的と考え、日本とカナダの高齢者のデータを比較するを通し、高齢者の身体機能の低下が介護ニーズへと転換する際に関連する要因を明らかにすることを目的としている。平成27年度の成果として、まず、調査を行う上で研究の理論的枠組と質的研究の方法論を最終的に決定するために文献のレビューを再度行った。結果、研究枠組みとしてはCarroll L. EstesによるPolitical Economy of Aging、また、質的研究の方法論としては Catherine K ReissmanのNarrative Methodsを用いることに決定した。次に、国際研究を実施する上でのガイドラインをカナダの現地の研究協力者であるオンタリオ州にあるブロック大学の健康科学部であるMarushima准教授と作成した。1回目は8月にインターネットを活用したウェブ会議(日本ーカナダ)を行った。2回目は11月に研究代表者が自らカナダに出張し直接にNarushima准教授と打ち合わせを実施した。研究協力者のリクルートの方法、調査内容、および現地での調査員の雇用および支払い方法など懸案事項について共通認識のもとガイドラインを作成することができた。最後はこれに基づいて、日本側での調査を開始することができた。平成28年1月に滋賀医大の研究倫理委員会へ申請書を提出し承認された後、2月に大阪市内の訪問看護ステーション1箇所へ調査協力を依頼し承諾を得え、3月に訪問調査によるインタビューを開始した。3月末までに1名の調査および分析を終了した。調査終了後、調査における課題が明らかになったので、効果的データ収集と分析を実施するために次回の実施へむけて面接調査のガイドラインの修正を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では平成27年度の後半に日本とカナダの両方において調査を開始する予定がやや遅れている。理由としては以下の通りである。まず、カナダ側の調査が遅れている理由であるが、当初の予定では、セメスター制をとるカナダの大学の夏季休暇(5月〜8月)の早期の段階でカナダ側の研究協力者と打ち合わせを実施し調査計画書を作成する予定であった。しかし、8月のウェブ会議での討議の結果、当初計画した対象者の選定基準(当初は経済階層の低所得者に限定)では対象者のリクルートが困難であること、また調査訪問時にラポールを形成するのに時間がかかることなど、新たな課題が明らかになった。そこで、再度研究対象者の選定基準のうち経済階層の幅を拡大することとした。次に、日本側の調査開始が遅れている理由についてであるが、研究代表者の職務(滋賀医大教授→滋賀医大客員教授)を変更することになったことによる影響がある。これに伴い、研究の拠点が滋賀県大津市より兵庫県神戸市へ変わり、研究協力者のリクルートを当初は滋賀県内で予定していたが、神戸市内および大阪市内で実施する必要がでてきた。研究協力施設の開拓などの調査に必要な基盤を新たに築くこととなり、予定よりも調査開始までに時間を要したことが遅れている主たる原因である。幸い、神戸市内で協力施設を依頼できすでに数名の高齢者を選定してもらっており、今後は予定どおり調査を実行できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
日本側の調査においては、四月に神戸市内の居宅介護支援事業所の1箇所から新たに研究協力の承諾を得、研究に参加可能な高齢者を3名紹介してもらった。5月よりこの高齢者に順次訪問し調査を進めていく予定である。また、同時に研究協力施設の開拓も行っていくこととする。カナダ側の調査においては、カナダ側の研究協力者のNarushima准教授が6月に神戸市で開催される国際学会に出席のため来日することになっている。この機会を利用し、カナダの高齢者の調査の開始にあたりカナダの大学(Narushima准教授の所属するオンタリオ州にあるブロック大学)の研究倫理委員会へ提出する倫理審査申請書を協働で作成する。これをもとに、今年度9月以降には調査を開始する予定である。尚、カナダ側の調査は質的研究の経験のある大学院生(Native English Speakers) を雇用し面接調査および逐語録の作成を英語にて行ってもらうため、Narushima准教授の方で大学院生のリクルートも調査開始前に行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりも調査の開始が遅れたために、調査員(大学院生)の雇用に関わる人件費/謝金の支払いが平成28年度に持ち越しとなった。また、平成27年度(初年度)に海外への出張旅費を計上していたが、調査が進んだ段階で学会発表を行う方が効果的と判断し、次年度へ持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年分として請求した助成金(900,000円)と合わせた使用計画は次の通りである。旅費 700,000円ー海外出張2回(学会発表および海外の研究協力者等との会議)、調査人件費(交通費含む)・謝金(日本・カナダの両方で)900,000円、その他(文献複写・図書購入)50,000円
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Research Products
(1 results)