2016 Fiscal Year Research-status Report
ハームリダクション時代の依存症ケア:日蘭の文化的差異をふまえた国際比較研究
Project/Area Number |
15K13084
|
Research Institution | Niigata College of Nursing |
Principal Investigator |
徐 淑子 新潟県立看護大学, 看護学部, 講師 (40304430)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 光穂 大阪大学, COデザインセンター, 教授 (40211718)
近藤 千春 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 准教授 (60331576)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ハーム・リダクション / 薬物依存症 / オランダ / 支援システム / 社会的ケア / 公衆衛生 / 国際比較 / ホームレス |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物使用をめぐる状況は、日本とオランダの間で大きく異なる。本研究課題は、ハーム・リダクションとよばれる比較的新しいアプローチについての考え方の違いを日蘭で比較しつつ、日本におけるハーム・リダクションの受容、薬物問題にたいするアプローチの多様性について検討する。そして、日本における医療・ケア、予防のオプションをどのように展開していくかの議論に、貢献していく。 研究初年度の2015年には、オランダ他におけるハーム・リダクション実践の動向を明らかにすべく、現況調査に力を入れ、それと同時に、オランダの研究協力者と調査の打ち合わせを重ねた。また、日本の状況についても、班員・近藤を中心に情報を収集し、整理した。 その結果、研究期間2年目の2016年度には、初年度の研究成果発表として、徐・池田・近藤(2017)他4編の関連論文を刊行、また、徐他、班員それぞれが関連する内容で執筆・口頭発表を行った。 研究計画の面では、2016年8月に日本側研究班より2名(徐、池田)がオランダの研究協力者(G-J Peters,G Kokら)をオランダ・マーストリヒト大学に訪問し、質/量的調査の概略、質的調査の調査項目、調査対象者、データ処理、研究倫理審査について打ち合わせた。 一方、研究班員・近藤から、ハーム・リダクション先進国のオランダ等だけでなく、日本と近い薬物政策をとっている国や、政策的にみて日本(厳罰政策)とオランダ(寛容政策)の中間に位置づく国を参照事例にとっては、との提案があった。2016年度は、2015年の日蘭双方での現況調査の結果を検討し、日本の状況に近い事例として韓国、ハーム・リダクションを一部取り入れている中間的な事例として台湾の2カ所を現況調査した。これら情報は日蘭調査の結果と合わせ、最終成果に統合する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、2016年度後半より日本およびオランダの両サイドで実証調査に着手する予定であった。ところが、以下の理由で進行が遅れた。1)日本およびオランダの研究者双方が合議し、当初の調査内容からの変更があったため、2)年度始まりや学年歴の違いより、日本側研究者とオランダの研究者で繁忙期が異なり、調査研究の進度擦り合わせに、当初計画以上の時間を必要としたため。 この遅れに対応するため、当初、研究期間内に予定していた日蘭双方の研究ワークショップ開催を2018年3月以降に繰り延べすることも検討していく。 逆に、研究成果の発表にかんしては順調で、現況調査の結果を学術論文および学術集会での口頭発表やポスター発表として、公表できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年は、本研究課題の最終年度である。当初よりの研究計画修正点(見込み)は以下のとおりである。 1) 日本において「ハーム・リダクション」ということばの知悉度は高まってきていると予想されるが、現在、ハーム・リダクションについてのまとまった日本語情報がじゅうぶんでなく、ハーム・リダクションの実際についてよく知られていない。そのため、調査は、当初予定の日蘭薬物使用者の直接比較だけでなく、当事者に医療者やケア・ワーカーを含めた言説比較、態度比較を行う。ハーム・リダクション先発国のカナダでも、当事者・専門職のハーム・リダクション理解に幅があることが明らかにされている。ハーム・リダクション連続体(Kellog SH, 2003, Suh S and Ikeda M, 2015)、ハーム・リダクション・スケール(Peters H, 2016)の考えに立ち、日蘭を比較する。 2) ハーム・リダクション・アプローチが薬物使用者のQOLやソーシャル・キャピタルに与える影響については、オランダをはじめとした国々の実践の中で、学術資料も含め、情報が蓄積してきている。そのため、できうる限りそれらの資料を活用し、独自調査(実証調査)を縮小、内容調整する。 3) 研究期間終了後、日本とオランダで用いた調査紙等を用いて他国(参照事例として現況調査を行った韓国、台湾等)にも調査することを視野に入れる。
|
Causes of Carryover |
差額は、つぎのような理由で生じた。 2016年8月に研究班より2名がオランダに渡航し、その際に研究打ち合わせを行ったところ、オランダ側調査については、本研究班拠出分の不足を先方の資金にて補うなどの可能性が示唆された。そこで、昨年度の予定では、2016年度および2017年度の年度ごとに本研究班より、オランダ調査の費用負担分を送金することにしていたが、研究期間の最終年度にあらためて、金額や内容を確定することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2018年度は、1)国内調査に必要な経費(旅費、調査雑費、謝礼など)、2)オランダ側調査の費用(音声筆耕、謝礼、交通費など、また、本研究班員がオランダに渡航した際の現況調査手配にかかわる実費など)。
|
Remarks |
上記の他、http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/ 内に、8件の関連ウェブページを2016年度内に作成し、公表した。http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/ikeda-jx.htm より検索可能。
|
Research Products
(16 results)