2016 Fiscal Year Research-status Report
プログラム評価の観点に基づく地方自治体における効果的な福祉課題解決方策の検討
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15K13096
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Research Institution | Japan College of Social Work |
Principal Investigator |
贄川 信幸 日本社会事業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30536181)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プログラム評価 / 福祉ニーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究ではこれまでに,既に研究代表者らが行った地方自治体を対象とした自記式アンケート調査の結果を精査し,複合的な福祉ニーズを抱える世帯(以下,多問題家族)に関する地方自治体の独自の対応を整理した。 取り組みに関する詳細資料が得られた自治体に焦点を当て,その取り組みを整理した。地域包括ケアシステム,生活困窮者自立支援,要保護児童対策地域協議会など,既存制度等に関して具体的取り組みを検討しているものが多く,ニーズ調査に基づく独自の対応を採っている自治体は限られた。しかし,既存制度等に基づく取り組みであっても,関連部局が同じフロアに配置され,連絡を密にとっている自治体,包括的に家族アセスメントを行えるシートを作成・使用し,必要に応じて関連部局と連携をとっている自治体など,実施上の工夫が多く認められた。一方で,現場対応をしない伝統的風習により他部門との協働に困難を抱える自治体も認められ,福祉ニーズに対する自治体の組織的役割に関する検討が必要であることも示唆された。 独自に地域にニーズ調査を行い,困難事例の要因を検討している自治体も認められた。多問題家族に焦点が当てられたものではなかったが,他部門との連携が困難な中で,担当部門が独自に取り組みを進めているものである。そこには複合的なニーズが認識されており,他部門との連携の必要性が示唆される。部門独自に行った取り組みを,どのように他部門との連携のなかで総合的に対応していくのかを検討する必要があると考えられた。また,連携の困難さゆえか,困難事例の要因分析が行われているものの,具体的な支援体制の構築まで言及されておらず,ニーズ評価からプログラム理論評価へ進む際の方策を共有できることも必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査結果の分析を踏まえて,ヒヤリング調査を行う予定であったが,調査結果の精査に時間を要したため。また,特定の課題(多問題家族)に焦点を当てて調査を行っていたが,生活困窮者自立支援法,地域包括ケアシステムなどの制度・政策的動きのなかで,当初の焦点だけではなく,総合的,包括的な支援の制度動向を踏まえた焦点の調整,ヒアリングの視点のあり方の検討が必要と考えられたため,調査計画を見直したことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の制度的動向を整理したうえで調査計画を見直し,それを踏まえたうえでヒアリング調査を行ってゆく。過去の調査時点では取り組みが開始されていなかったが,予定として詳細資料が得られた自治体に関しても,その後の動向に焦点を当ててヒアリングを行うことで,立ち上げと実施における工夫や課題点などを整理する。 2016年度の調査結果の精査により示唆された,多問題家族の福祉ニーズに対する自治体の取り組みにおける創意・工夫および課題点,ニーズ評価からプログラム理論評価へ進む時点での課題等に焦点を当てたヒアリング,意見交換等を行うことで,自治体におけるニーズに即した総合的・包括的な支援のあり方を検討することができると考える。
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Causes of Carryover |
調査結果の精査を中心と進めたため,予定していたヒアリング調査,意見交換などに支出予定であった予算執行を行わなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度には,予定していたヒアリング調査および意見交換などにおいて旅費支出などを中心に執行する予定である。
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