2015 Fiscal Year Research-status Report
働く世代のがん患者が抱える社会的問題の評価尺度とスクリーニングによる介入法の開発
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15K13100
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
久村 和穂 (石川和穂) 金沢医科大学, 医学部, 助教 (00326993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
元雄 良治 金沢医科大学, 医学部, 教授 (80210095)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | がん患者 / 社会的苦痛 / 生活の質 / ソーシャルワーク / スクリーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目的は、働く世代(20~64歳)の通院中のがん患者が経験する社会的問題を評価するための簡便な評価尺度を作成し、ソーシャルワーカーがこれをスクリーニング・ツールとして使用して支援することの有効性を、社会的苦痛の低減、生活の質の改善、就業維持率等によって評価することにある。初年度は、働く世代のがん患者が経験する社会的問題の評価尺度の開発、および、スクリーニング後の介入法に関する検討を行った。 国内外で実施されている若年層のがん患者の心理社会的苦痛のスクリーニングに関する文献研究および関連学会等で情報収集を行った。その結果、各国で様々なスクリーニング・ツールが使用されているが、単にスクリーニングを行うだけでは患者の生活の質は改善せず、スクリーニング後の適切な専門職や社会資源への照会・連結やスクリーニング陽性者のフォローアップ等の支援を行うことがより重要であるとの知見が蓄積されつつあることが分かった。 また、本研究の副次的アウトカムの1つである就労維持率の改善に関わる評価項目や介入法を探索するため、医療機関におけるがん患者の仕事と治療の両立支援の在り方について、5つのがん診療連携拠点病院でがん患者の就労相談に携わるソーシャルワーカー6名と社会保険労務士7名を対象としたフォーカス・グループ・インタビュー調査を実施した。質的内容分析の結果、治療を要するがん患者の就労支援にあたって最も重要な要因の1つは、がん診療に携わる多職種の連携強化であることが示唆された。 外来でがん診療に携わる多職種(がん治療医、緩和ケア医、精神科医、看護師、心理士、緩和ケアチーム)による研究グループを組織する必要性を認識し、評価尺度の開発とスクリーニング後の支援に関するアルゴリズムの作成を含めて協力を依頼し新たな研究メンバーを加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
稼働年齢のがん患者の社会的問題に関するインターネット調査を実施するにあたり、評価尺度の標準化、および、スクリーニング実施後の介入法に関する以下の点について、さらに情報収集と検討を重ねる必要があった。 1点目として、若年層のがん患者の心理社会的苦痛のスクリーニングに関する国内外の文献研究や関連学会等での情報収集を行った結果、単にスクリーニングを行うだけでは患者の生活の質は改善せず、スクリーニング後の適切な専門職や社会資源への照会・連結やスクリーニング陽性者のフォローアップ等の支援を確実に行うことがより重要であることが分かった。また、本研究の副次的アウトカムの1つである就労維持率の改善に関わる評価項目や介入法を探索するため、医療機関におけるがん患者の仕事と治療の両立支援の在り方について、がん診療連携拠点病院でがん患者の就労相談に携わるソーシャルワーカーと社会保険労務士を対象としたフォーカス・グループ・インタビュー調査を実施した。その結果、最も重要な要因の1つは、がん診療に携わる多職種の連携強化であることが示唆された。これらの結果を踏まえ、外来でがん診療に携わる多職種による研究グループを組織する必要性を認識し、新たな研究メンバーを加えて評価尺度の開発とスクリーニング後の支援に関するアルゴリズムの作成を含めて協力を依頼した。 2点目として、スクリーニング実施後の介入法の1つとして、ソリューション・フォーカスド・アプローチに関する研修を受け、その応用について検討を行った。 3点目に、尺度開発における研究方法の質を担保するため、健康関連尺度の選択に関する合意に基づく国際基準(Consensus-based standards for the selection of health measurement Instruments)に基づき、インターネット調査の設計の見直しを行った。現在、インターネット調査に関する研究計画書を本学倫理審査委員会に提出し審査中である。
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Strategy for Future Research Activity |
倫理審査委員会からの承認が得られ次第、がん患者の社会的問題に関するインターネット調査を実施し、評価尺度の標準化を行う。この調査に先立ち、稼働年齢のがん患者10~20名を対象に半構造化面接によるプレ調査を実施し、社会的問題の仮評価尺度に含まれる項目を必要に応じて改訂する。その後、多職種の専門家パネルによる検討を経て調査項目を最終決定した後、がん罹患後5年以内の20~64歳(罹患時の年齢は20~59歳)の患者約1,000名を対象にインターネット調査を実施する。調査予定期間は約1か月間(一部の対象者に対して実施される2週間後の再テストを含める)であり、次年度前半には評価尺度の標準化を終了する。 インターネット調査の実施、および、尺度を標準化する解析作業と並行して、スクリーニング実施後の介入法について多職種パネルと協議し、スクリーニング陽性者への適切な情報提供、および、社会資源への照会・連結を行うためのアルゴリズムを作成する。次年度後半には、稼働年齢の通院中のがん患者を対象に標準化された評価尺度を用いた社会的問題のスクリーニング、および、その結果に基づく介入を開始することを目標としている。 なお、インターネット調査の結果から標準化された社会的問題の評価尺度については、学会発表等においてその成果を公表する予定である。
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Causes of Carryover |
稼動年齢のがん患者(約1,000名)を対象にしたインターネット調査の委託費として予算を計上していたが、現在、研究計画書を倫理審査委員会で審査中であり、調査の実施は次年度に見送ることとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
全額をインターネット調査の委託費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)