2015 Fiscal Year Research-status Report
長期閉鎖環境における心理的危機に対する組織的支援および危機管理機能の継承
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15K13119
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
鳴岩 伸生 京都光華女子大学, 健康科学部, 准教授 (20388218)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 知子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20205272)
川部 哲也 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (70437177)
佐々木 玲仁 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (70411121)
加藤 奈奈子 奈良女子大学, 生活科学環境系, 助教 (40583117)
佐々木 麻子 立命館大学, 学生サポートルーム, 特定業務専門職員 (80649517)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会系心理学 / 南極 / 長期閉鎖環境 / リーダーシップ / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,準備期間から越冬終了までの越冬隊長による配慮の詳細を調査することにより,ⅰ)隊長の組織運営がもたらす隊員の心理的不調の予防とストレス緩和の効果を明らかにし,ⅱ)長期閉鎖環境下で生じる心理的危機への汎用性の高い組織的支援策を見出すことを目的とする。さらに,ⅲ)隊長職経験者の組織運営および危機管理の知見を集約し,次世代のリーダー育成に資する引継ぎシステムの可能性を探ることを目的とする。平成27年度の研究成果は、以下の3点である。 (1)【第55次南極地域観測隊越冬隊員への帰国後調査】国立極地研究所および越冬隊医療隊員の協力のもと,平成27年3月に帰国した、第55次南極地域観測隊越冬隊員に対して,平成28年2月19日(金)~20日(土)に,国立極地研究所において,帰国後の面接調査を施行した。調査協力者は,越冬隊長を含む10名であった。また,2月29日,3月5日には,大阪府立大学(I‐siteなんば)において,同じく第55次隊越冬隊員2名への帰国後調査を実施した。 (2)【越冬隊長経験者への面接調査の協力要請と施行】越冬隊長経験者への面接調査については,国立極地研究所の渡邉研太郎教授に協力要請を行い,次年度実施に向けての内諾を得た。今年度に実施できた越冬隊長への面接調査は1件であった。 (3)【第57次隊越冬隊長への面接調査依頼と施行】第57次隊の越冬隊長に対し,出発前の面接調査を施行した。越冬中の調査については,越冬隊長への影響および越冬隊への影響への配慮が必要と考え,実施計画を一部見直すこととし,次年度にあらためて国立極地研究所に依頼することとした。 これまでの研究成果を公表するため,2016年8月に,マレーシアで開催される南極科学委員会SCAR(Scientific Committee on Antarctic Research)主催の学術集会での発表にエントリーした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究成果として、(1)帰国した第55次南極地域観測隊越冬隊員12名への面接調査を施行することができた。(2)越冬隊長経験者への面接調査の協力要請と施行に関しては,次年度施行に関する連携研究者への協力要請までしか進まず,結果1名のみの施行となったが,越冬隊長経験者の情報が得られたため,次年度には多くの隊長経験者からの協力を得られる見込みである。(3)第57次隊越冬隊長への面接調査依頼と施行については,出発前の面接調査が施行できた。一方で,越冬中の調査については,実施計画の一部見直しが必要と判断し,次年度実施に向けて,計画の修正を進めているところである。 また,研究成果の公表については,2016年8月に,マレーシアで開催される南極科学委員会SCAR(Scientific Committee on Antarctic Research)主催の学術集会での発表にエントリーした。 以上の3点の研究成果および学術集会へのエントリーを果たしたことから,計画の見直しなど,一部施行を遅らせざるを得なかった点があったものの,「おおむね順調に進展している」と評価した。しかし,研究成果を着実なものにするためには,次年度には,研究の中心となる越冬隊長経験者への面接調査と,越冬中の越冬隊長への調査を,精力的に進める必要があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,若干の調査計画の修正を加えたうえで,以下の3つの調査と,これまでの成果発表を行う予定である。 (1)【越冬隊長経験者への面接調査の施行と質的分析】前年度に引き続き,越冬隊長経験者への面接調査を行い,訓練期間中から帰国後までの越冬隊の運営における心理的配慮と,越冬中の危機的状況における決断に至る過程に関する情報を聴取する。また,隊長経験者自身が隊員時代に体験した当時の越冬隊長からの関わりや,越冬隊長就任の際に受けた心理的準備性に関わる引き継ぎの在り方に関する情報を聴取する。面接調査により多くの事例が収集された時点で,質的分析を行い,隊長と隊員の個別性を超えた心理的支援の質的次元を抽出する。 (2)【越冬隊経験者への面接調査】面接調査を行った越冬隊長と同じ隊に所属していた越冬隊員への面接調査を実施し,隊長および隊員が経験した心理的危機とその支援に関する情報を聴取する。 (3)【57次隊越冬隊長への調査の施行】越冬中の越冬隊長に対する調査に関しては,リアルタイムでの面接調査の侵襲性に配慮し,当初計画していたテレビ会議システムを利用した面接調査ではなく,都合のよい時間に書面に記入する形式への変更が必要と考えられる。越冬中期,越冬後期の2回施行し,越冬前半の振り返り,越冬後半の振り返りの形で,越冬隊長の危機管理や組織運営上の心理的配慮について聴取する。 (4)【成果の発表】研究成果を,2016年8月に,マレーシアで開催予定の南極科学委員会SCAR(Scientific Committee on Antarctic Research)主催の学術集会で発表し,学術論文として公表する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は,パソコンの購入が間に合わなかったためである。また,帰国後の面接調査を2015年12月に施行する予定であったのが,調査時期が2016年2月にずれこんだため,音声データの資料整理を今年度中に実施できなかったことも一因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には,今年度に計画していた通り,学会発表や分析に使用するパソコンを購入し,また,面接調査の音声データの資料整理の謝金として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)