2015 Fiscal Year Research-status Report
「教えて考えさせる授業」の効果検討―学力差の克服と学習方略の獲得に着目して―
Project/Area Number |
15K13126
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
深谷 達史 群馬大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (70724227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植阪 友理 東京大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (60610219)
市川 伸一 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70134335)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教えて考えさせる授業 / 受容学習 / 発見学習 / 学習方略 / メタ認知 / 問題解決 / 直接教授 / 教授法 |
Outline of Annual Research Achievements |
教育心理学では,学習者に規則や概念を発見させる「発見学習」と,教師がそれらを直接的に教授する「受容学習」が代表的な教授法として知られてきたが,それぞれの限界が明らかにされたことで,両者を統合しその限界を乗り越える試みの必要性が指摘されている(Lee & Anderson, 2013)。その試みの1つである「教えて考えさえる授業」(Thinking-after-Instruction, TAI)は,授業冒頭で教師から基本的な事項を分かりやすく教え(教師からの説明),学習者同士が学んだことを教えあう理解確認により,共通の土台となる知識を全員が獲得する。さらに,さらに高度な内容について発見的・協同的な学習を行い(理解深化),最後の自己評価で,自己の学習を振りかえさせる(市川,2004)。 本年度に行った研究1では,学習者の知識獲得における教えて考えさせる授業の有効性を検証した。実験では,理解確認を行わない代わりに理解深化の時間を長くとる「セミTAI群」と,教師からの説明の前に基本的事項について発見的学習を行う「TBI群」という2つの統制群を設けた。5日間の学習講座に参加した中学生を対象に,理科の授業を行った。5日目の事後テストの結果,基本事項,発展事項のいずれにおいてもTAI群が他2群を上回る学習成績を示した。 さらに研究2では,長期的な変化を調べるため,教えて考えさせる授業を導入した公立小学校を対象に,導入前後にわたり算数の学力調査を実施した。その結果,算数テストの成績が向上するだけでなく,図を活用して問題を解くといった学習方略の使用も高まったことが明らかとなった。教員に対する調査結果から,教えて考えさせる授業を的確にデザインできるようになったことが児童の学力の変化の背景にあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた2つの研究(中学生を対象とした実験授業,公立学校におけるフィールドリサーチ)を順調に実施し,データを収集することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1については,概ね分析も終えることができたため,本年度中に国内学会にて発表するとともに国際学術誌に投稿し,研究成果を広く発信するよう努める。研究2については,児童の学力データと教員の指導データとの関連を明らかにする分析を進めるとともに,今まで得られた研究結果を国際学会にて発表する。またフィールドリサーチに関して,可能であれば他の公立学校においても実践的な研究を進める。
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Causes of Carryover |
予定していたよりも少額で物品が購入できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた剰余金については消耗品の購入にあてる。
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Research Products
(7 results)