2017 Fiscal Year Research-status Report
生涯発達に即した‘感情マネジメント’をフェーズに組込んだ危機予防教育の開発
Project/Area Number |
15K13129
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大森 美香 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (50312806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 弥生 法政大学, 文学部, 教授 (00210956)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 危機予防 / 感情リタラシー / 意思決定 / 成人 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
災害、事件・事故、疾病の罹患など突然ふりかかるあらゆる危機に対する適切な行動のためには、認知的に適正なリスク評価が前提となる。しかし、実際にはパニックや混乱などの感情マネジメントがうまくいかず的確なリスクの認知やとるべき行動が予測できない状況に陥ることが少なくない。危機に遭遇したときの子どもや高齢者のリスク認知や感情マネジメントは、成人と異なる特徴を有すると想定され、危機予防教育改善には、生涯発達からのアプローチが必要不可欠と考えられる。このような観点から、本研究の当初目的を以下の2つとした:(1)危機・リスク認知と感情マネジメントの関連性の解明、(2)発達に即した感情マネジメントを各フェーズにとりこんだ危機予防教育プログラムの開発。 2016年度までの実施状況をふまえ、2017年度の目的は、学校場面における感情教育の調査、成人における実存的不安の検討にあった。実存的不安は、思考や感情、意思決定、精神病理、心理療法開発の研究において重要な概念として注目を集めており、危機予防のための意思決定理解のために不可欠な概念であると考えられた。日本においては、実存的不安は、高齢者の死に対する態度との関連で論じられてきたが、その他の発達段階ではほとんど論じられていない。したがって、成人における実存的不安の文献調査を行い、海外の研究者とともに測定尺度作成の準備、計量心理学的特性の検討を行い、現在解析を進めている。分担者は、特に、学校教育場面における感情教育のありかた、感情発達や感情リタラシーの国内外の研究について、国内外の学術大会において調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
危機予防に際しての意思決定に関する心理プロセスとして、新たに実存的不安に着目し、年度内に文献研究から調査の実施および解析の一部を済ませることができた。また、子ども期の感情リタラシー教育に関しては、2016年度までの成果をまとめ、その一部を学術大会で発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
危機予防における感情の役割に焦点をあてながら、危機予防教育開発の示唆を得ることを目標とし、子どもの感情リタラシーおよび学校教育場面での感情リタラシー教育のあり方について引き続き検討を進める。さらに、危機予防に際しての意思決定に関わると考えられる実存的不安について、測定ツールを開発することを目的として、調査から得られたデータの解析を継続して行う。最終年度には、学術大会などの場において成果を発表しながら、国内外の専門家と討論をすすめ、危機予防をめざした感情教育のあり方についての検討を纏める。
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Causes of Carryover |
危機予防における意思決定に関係があるとされる「実存的不安」に着目し、調査計画を行なったのが2017年度はじめであった。計画の立案からデータ分析まで行うことができたが、学術大会での成果発表のエントリーは次年度となるため成果発表を次年度とする必要が生じた。したがって、2018年度は、「実存的不安」に関する調査のデータ解析をすすめ、学術大会で発表、国外共同研究者と研究打ち合わせを行う予定である。
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