2016 Fiscal Year Research-status Report
文化伝達からみた幼児の仲間集団の発達:実験的アプローチの試み
Project/Area Number |
15K13131
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幼児期 / 文化伝達 / overimitation |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児は,仲間の振る舞いを見てあるいは相互に教えあって文化(知識,技術,規範)を学び伝える。本研究は,幼児の集団内における文化伝達のプロセスを調べるための実験的方法を開発し,文化伝達の指標化を試みることを目的にしている。今年度は,特に文化伝達の基本単位として,モデルから模倣学習が成立するプロセスに着目して,実験的検討を行った。 1.Overimitationに関わる仮説の検討:模倣学習において,忠実な模倣は効率的な文化伝達を促進する一方で,無関連な行為をも模倣するoverimitationが生じることがある。その原因について文献レビューを行い,いくつかの可能性を比較検討し,無関連行為を因果的に必要なものというよりも,慣習的に必要なものとしてみなす社会的慣習仮説が有力であると考え,行為系列全体の目標を示せば,無関連な行為の模倣は減じると予想した。 2.実験の概要:保育園に在園する年長児を対象に,一連の行為(3つのビーズを選び,それをこすって台に置き,ひもを通す)を模倣学習させる課題を実施した。その際,目標明示群(首飾りを作るという目標を事前に伝える)と慣習群(単に「ここにあるものを使ってすることこと」を見てもらうと教示)に対象児を分けた。モデルの行為の忠実度(用いたビーズの数,順序,ビーズの台の上への配置,こする行為の有無など)を指標にして,2群の相違を検討した結果,模倣の仕方において両群の違いは認められなかった。 3.今後の課題:慣習群の教示が,対象物を使って多くの人が慣習的に行う行為であることを子どもが理解しにくかった可能性がある。日常場面において,集団の規範性を幼児が認知するための条件をさらに検討して,それを組み込んだ実験と日常場面での介入的観察を進めることが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
幼児期における文化伝達を規定する要因の一つに,行為の種類が関係することが示唆され,文化伝達をとらえるための実験的方法に必要な要件を提起できた。しかしながら,慣習的に行う行為であることを幼児に伝える教示のあり方は,さらに精査する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 目標達成のための行為と慣習的な行為を弁別できるよう教示をさらに工夫した実験を行い,方法上の改善を進める。 2. その結果を踏まえて,2015年度に実施したような半統制的な保育場面において,タイプの異なる行為を伝達させる方法で,実際の文化伝達プロセスを観察する。 3. 以上の結果をまとめて,幼児期における文化伝達を検討する実験的アプローチのあり方を提案する。
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Causes of Carryover |
資料整理を効率的に行い,謝金の支出が予定より下回り,あわせて経費節減を行ったことによって,次年度使用分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究フィールドを増やしてより多くのデータを収集し,研究成果を発表するのに要する旅費として使用する。
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