2015 Fiscal Year Research-status Report
思春期行動の発現機序に関する生物学的要因を基盤とした解明の試み
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15K13132
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
齊藤 誠一 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (60186939)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 思春期 / 反抗 / 衝動性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.文献検討と研究モデルの検討:思春期行動の発生機序について,心理学,生物学・医学・保健学,社会学など関連領域から文献検討を行い,研究動向を明らかにした。心理学では,とりわけ我が国では思春期行動の記述研究は見られるものの,思春期の身体的変化が当の青年の心理的動揺,自我の覚醒を介しての反抗や衝動行動を生じさせるという古典的な解釈にとどまっている。生物学・医学では主として前頭前野の成熟のアンバランスを原因にしているものの,実際には一部青年にしか問題行動が生じないことについては説明が十分とは言えない。他方,行動遺伝学の観点から当該行動の遺伝子情報の発現のオン/オフを決定するエピジェネシスや精神発達病理学の観点で用いられているリスク要因/防御要因の機能が思春期行動の解明にも有効であるといえる。こうした点から,脳発達の起点として,①脳発達の指標となる観察可能な身体的変化や心理的変化,②衝動性や反抗を抑制/増強させる対人的環境や物理的環境,③当の青年が有する発達的脆弱性を要因として予備的モデルを設定した。 2.測定用具の開発:脳研究において一般的であるはMRIに代わり,通常の質問紙調査でも生物学的発達状態の測定ができる用具の開発を行った。①現状ではタナーステージをイラストや文章で問うことが難しいことから,Susman ら(2010)を参考にした簡便な測定が可能な自記式質問紙,②思春期にも影響を与えるされる胎生期の性ホルモン暴露に関する2D/4D比を測定するための薬指長と人差し指長の測定用具,③メタ認知機能の発達を反映する作業課題について検討を行い,小サンプルでの調査の結果から使用可能性を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
思春期行動に関わる文献的検討において,心理学以外での学問領域での成果が多いことから予想以上の時間を要したが,概ね全体的な研究動向を把握し、心理学的研究モデルの設定ができた。また,測定用具の作成にあたっては3つの観点から検討を行ったため,同様に時間を要したが,当初計画に準じた時期での次回調査実施が可能な段階に到達できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究モデルを実証するために,小学生5,6年男女200名,中学生男女300名,高校生男女300名とその保護者800名程度を調査協力者として,調査委託により適切なペアデータとして収集を行う計画であるが,当初予定の調査委託に加え,ウェブ調査や協力校での調査も検討を行い,回答の安定したデータの収集を目指すこととする。また,調査内容として,青年,保護者とも,青年には自分について,保護者には子について,①衝動統制,②認知・情動調節,③抑うつ兆候,④実行機能,⑤生物的発達程度,⑥過去の逆境体験,⑦思春期行動を計画しているが,思春期に関わる悩み事に対する記述も求め,それに対する回答も行うことによる協力者に対するフィードバックサービスを加え,回収率の向上を目指すこととする。
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