2015 Fiscal Year Research-status Report
アスペルガー障害の感情へのガイダンス・カウンセリング法の開発
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15K13133
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
須田 治 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 客員教授 (50132098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 昭夫 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (90330729)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 情動 / 感情 / アスペルガー症候群 / 不安 / 発達支援 / 健常者 / 青年 / 成人 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度(2015年度),この研究では,自閉症スペクトラム障害のうちアスペルガー障害(ADと略)をとりあげ,健常者との比較研究を行なった。アスペルガー障害群の8ケースと,同性,同年輩の健常者をマッチングさせ,比較群にした。対象者は,成人であった。ここでは,診断名によってAD群をとらえた。そして感情体験についてのインタビュー,アレキシサイミア傾向,不安傾向,あるいは情動行動の表出傾向などの比較を行なった。論文発表は,現在準備中である。日本発達心理学会での2016年4月の発表ではその結果について報告する。 結果からは,AD群のほうが,健常な成人よりも,自分の感情の説明が乏しく,情動行動の表出が乏しかったが,アレキシサイミア傾向は必ずしも高くなかった。じつはASDという概念が2013年からDSM5で用いられたことで,情動への視点を採りやすくなったが,知能上の差異が制御されていないことが,支援方法を考える上でも重要に思われた。しかし実践的な貢献を優先し,この記述された結果からも,支援のポイントは明らかになっていった。とくに心的体験としての感情(feeling)の問題は一部のケースには重要ととらえられた。 神経回路の発達によって,情動と認知とは機能的連携が生じすようになり(ダマシオのいう二次的情動),感情的な体験が生みだされる。その体験の弱さをアスペルガー障害者は示した。そのケースへの心理学的援助のために,本研究では感情の様相にたいして助言を中核としたカウンセリングを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究上のデータ採取は,ほぼ終わっているが,さらに検討を広げることにしたい。しかしまだ論文として投稿にまでは進んでいない。研究データの質は,ケースごとのヴィデオ録画まで含んだもので,そのマイクロ分析の結果は貴重であるといえる。 日本発達心理学会での発表では,会場で感情の生起の特徴を健常者とアスペルガー障害とで対比することに新たな方法に成功している。今年度の研究で,より広い成果をえることができるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
障害の当事者の感情へのカウンセリングとともに,親に対する発達ガイダンスを試み,それらが当事者や親との,不安軽減や,社会的参加の有効なことを検討してきた。しかし平成28年度(2016年度)は,親への支援をもう少し検討してみようと考えている。すなわち知的発達や言語発達に遅れのないアスペルガー障害と,精神発達遅滞(MRと略)を伴う自閉症スペクトラム障害(ASDと略)とを対比したときに,情動機能の発達に相違があるようであるし,それにもかかわって親への発達ガイダンスのあり方も異なるべきところがあると考えられる。そこで青年成人だけでなく,一部小学生も含めて,アスペルガー障害と,知的遅れのある自閉症スペクトラム障害とのケースの支援の可能性の相違を取り上げて,障害特性の相違を踏まえて,発達支援を検討することにしたい。
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Causes of Carryover |
購入予定品,Roland社のビデオ同期装置についての正確な情報が得られず購入できなかった。理由は,ビデオ・カメラ(複数台)が時代とともに多様に変化し,そのために同期装置の側の接続端子の適合性などが不確定が続き,結論付けられなかったので購入をしなかった。価格は周辺備品にもよるが24万程度であった。周辺接続端子やモニターを含めると29万円であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度においてRoland社のビデオ同期装置の購入をするかどうか,解析自体もこの数ヶ月で変化したため,解析の見通しが立ったなら購入するが,不明確なら他の用途に使用を変更したい。
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Research Products
(5 results)