2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバリゼーション時代における新しい心理学史の叙述
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15K13135
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐藤 達哉 立命館大学, 総合心理学部, 教授 (90215806)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心理学史 / 共感 / ラテンアメリカ諸国の心理学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
国家資格(公認心理師)制度が始まるにあたり、心理学という学問の歴史を理解することは重要である。その際、従来の欧米中心の心理学史を理解するだけではなく、あまり知られていないその他の国々(ラテンアメリカ諸国・イスラム諸国)の歴史を知ることは重要であり、様々な二次資料を駆使ししてその理解・記述を行った。また、公認心理師の中心である臨床心理学史についての単著の原稿を完成させた。 また、心理学におけるダイバーシティの理解という意味で、心理学史上の女性心理学者の活躍に焦点をあてた『心理学ワールド』の歴史エッセイ「心理学史の中の女性たち」というシリーズについても引き続き執筆・刊行を行った。とりあげたのは、ローレッタ・ベンダー、マミー・クラーク、リタ・ホリングワース、メアリー・エインスワースの4名である。このうち、マミー・クラークは黒人女性心理学者として、心理学史のみならず科学史においても著名な人物であり、その紹介を日本で行えたことは意義があると考えられる。 さらに、個別の心理学史として、共感に関する心理学史的な研究を行いコフートやロジャーズの学説を検討して学会発表を行った。また、歴史の叙述を「時間」の次元と「実現したことと実現しなかったこと」の次元で行うための基本的な方法論であるTEA(複線径路等至性アプローチ)について著書を刊行した。 以上の実績は満足できるものではあるが、ラテンアメリカ諸国・イスラム諸国のいずれかの国の実地調査が行えておらず、一次資料に基づく歴史叙述を行うための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラテンアメリカ諸国の歴史の実地調査を行えなかったが、単著『臨床心理学史』については脱稿し、あとは2018年9月の刊行を待つだけとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
心理学史の前史にあたるヴォルフの『経験心理学』について、近年刊行された和洋の専門書を参照して理解を深める。 心理学の世界規模的なひろがりを理解するため、『The Oxford Handbook of the History of Psychology: Global Perspectives』に記述されている29カ国のうち特にラテンアメリカ諸国やイスラム圏の心理学について理解を深める。 可能であれば、ラテンアメリカ諸国のうちの1つの国の歴史の実地調査を行う。 以上を通じて、心理学という学範(ディシプリン)の時間的空間的ひろがりを把握し、「グローバリゼーション時代における新しい心理学史の叙述」に関する(エッセイ的)論文を書き上げる。
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Causes of Carryover |
本研究は心理学実験室開設の1879年を中心に歴史を検討し140年後の2020年までを展望することを目的としていた。ただし、開設以前の過去については20年前の1860年までしか遡ることを計画していなかった。しかるに、1879年から140年前の1740年頃に発行されたヴォルフの『経験心理学』に関する哲学史研究の進展があり、同所の影響について調べることが研究目的遂行のために有用だと考えるようになった。 また、ラテンアメリカ諸国もしくはイスラム圏の心理学の歴史について実地で検討する必要が生じたため、平成30年度に調査を行いたい。
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Research Products
(10 results)