2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K13141
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
上田 琢哉 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (50632767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 臨床心理学 / パーソナリティ / 心理アセスメント / 心理検査 / 描画テスト / 石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、パーソナリティ研究や心理療法のアセスメントとして用いられる描画テストの一法として、「石」を描いてもらうだけのStone Testを開発することを目的としている。今回そのための基礎的研究として、第一に、Stone Testの施行法を確立し、描画結果の指標化を行う。第二に、他の心理検査との関係から、Stone Testの併存的妥当性を検証する。本研究が結実した場合、代表的な投影法的心理検査であるBaum Test(樹木画テスト)に匹敵するほど簡便で、普遍性の高い心理検査技法となりうる可能性がある。 計画1年目である平成27年度は、予備調査として、Stone Testの施行法の検討と描画結果の指標化を行う予定であった。実際は、予備調査の進展が早かったため、平成28年度に予定していた併存的妥当性の検討に着手することができた。具体的には、キャッテル不安診断検査(Cattell Anxiety Scale:CAS)とStone Testの関係を検証するための実験をおこなった。 その結果、石の大きさはCASとの間に明確な関係は見られなかった。一方で、石の数については、単独群と多数群との間に有意な差が見られた。石を多数置く群の方がCASの下位因子である「衝動性」が高かった。また、石の位置については下段に置いた群の方が中段に置いた群に比べ、CAS合計得点が高いことが明らかになった。以上から、石の描き方が投影法的心理検査の指標として有効である可能性が示唆された。 本調査の結果は、平成28年7月に開催される31st International Congress of Psychology (第31回国際心理学会議)において発表する予定になっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1年目は、予備調査によってStone Testの施行法の検討まで行う予定であったが、進展が早かったため、計画2年目に予定していた他の心理検査との併存的妥当性を検証する実験まで進めることができた。 ただし、そこで新しい課題が明らかになったため、施行法に修正を加えて追加の実験を行うこととした。そのため、全体としては、ほぼ当初の計画通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に、Stone Testとキャッテル不安診断検査(Cattell Anxiety Scale:CAS)の関係を検証するための研究を行うことができたので、その結果を平成28年7月に開催される31st International Congress of Psychology (第31回国際心理学会議:第80回日本心理学会共同開催)においてポスター発表をする予定である。 平成27年度の研究では、CASとの間に一貫した結果が見られない指標が多くあった。したがって、計画2年目となる平成28年度は、先の研究によって明らかになった課題を修正して、再調査を行う。先の研究で明らかになった課題は以下の二つである。一つは、教示の見直しの必要性である。具体的には、描画対象である「石」を複数描かせる方法と一つだけ描かせる方法との比較が必要であることがわかった。もう一点は、併存的妥当性を確認するために用いる心理検査の再検討である。平成27年度の調査で用いたキャッテル不安診断検査(Cattell Anxiety Scale:CAS)は個人の不安傾向のみを測定するものであったこと、また質問項目の表現が古く、「社会的望ましさ」の影響を受けやすいものであったことなどから、今回の目的に照らして十分な心理検査とは考えられなかった。したがって、より汎用性が高く、パーソナリティの外向性と神経質傾向の2軸を測定しうるモーズレイ性格検査(Maudsley Personality Inventory:MPI)を用いて、データを取り直すこととする。 修正を踏まえた本研究については、平成27年度の研究結果と合わせて論文に執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに執行できたが、研究に関する打ち合わせの回数が予定より少なかったため、旅費について若干の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ほとんど差額はないため、次年度についても当初の計画通りに予算を執行する予定である。 平成28年度は、モーズレイ性格検査(Maudsley Personality Inventory:MPI)やウェクスラー式成人知能検査(WAIS-Ⅲ)等の心理検査用具、文具等の物品費、また実験補助者への謝金に使用する予定である。加えて、研究成果発表のための国際学会への参加費・旅費等に使用する予定である。
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