2015 Fiscal Year Research-status Report
保育士のリアリティショックの測定尺度開発と早期退職を防ぐプログラムの提案
Project/Area Number |
15K13152
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Research Institution | Sanyo Gakuen University |
Principal Investigator |
松浦 美晴 山陽学園大学, 総合人間学部, 准教授 (00330647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
皆川 順 山陽学園短期大学, その他部局等, 教授 (30305940)
上地 玲子 山陽学園大学, 総合人間学部, 講師 (40353106)
岡本 響子 奈良学園大学, 保健医療学部, 准教授 (60517796)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 保育士 / 早期離職 / リアリティショック / 潜在保育士 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、潜在保育士問題の要因の1つとして、保育士が就職前に抱いていたイメージと現実とのギャップによって心理社会的・身体的ショック反応が生じる「リアリティショック」に着目した。リアリティショックの測定尺度を開発し、それを用いた調査によって、保育士のリアリティショックの高リスク要因を抽出し、保育士養成校や保育施設向けの「リアリティショック予防プログラム」を提案することを目的としている。 平成27年度は、リアリティショックに関わる概念を整理し、リアリティショック測定尺度の項目収集のため、保育士に対するヒアリングを行った。当初の計画では、新卒で就職して1年目の保育士のみにヒアリングを行う予定であったが、保育現場では就職後2年目以降に初めて経験する仕事もあることから、新卒保育士8名に加え、2年目から4年間までの保育士それぞれ3名ずつを対象とした。 ヒアリングでは、「就職する前の仕事のイメージと就職してからの実際との間のギャップ」「それにより感じたこと、考えたこと」「それによる行動の変化」「周囲からのサポート」等を聴取した。 聴取内容を逐語化し、KJ法を参考に分析を行い、就職前の就労イメージと就職後の実際とのギャップの認知、および、心理社会的・身体的反応等を抽出した。ここから予備尺度の項目を作成中である。 27年度の成果を、28年度に開催される国際学会で発表するため、3件の発表を申し込んだ。また、本研究の根拠となる、リアリティショック研究の潜在保育士問題解消への寄与可能性について論じた論文一篇を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒアリングについては、当初予定していた新卒後就職1年目の保育士だけでなく、就職2年目から4年目の保育士に対象を拡げた。そのため、当初予定よりヒアリングに時間を要した。予定では、ヒアリングの内容をもとにリアリティショックの予備尺度を作成し、予備調査を実施することになっていたが、予備調査の作成に至ることができなかった。しかし、就職2年目以降の保育士による回想の形で、渦中にいる1年目の保育士が気づかない内容を聴取することができた。また、保育施設における勤務は、年間の行事スケジュールに沿ったものである。1年のサイクルを経験した2年目以降の保育士から、より多岐に渡るリアリティショックの内容を得ることができた。これらによって、より有用な尺度の開発につながったと考えている。 28年度には、新卒保育士のリアリティショックを測定し、先行要因との関連を検討する予定であった。ここで予備尺度を使用することで、尺度開発のための予備調査を兼ねることができ、27年度の遅れを取り戻すことが可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、リアリティショックの先行要因と考えられる変数と、保育士として就労することで経験するリアリティショックとの関連を調査する。まず、新卒で就職したばかりの保育士に、年度始めに調査を行い、先行要因を測定する。その後、追跡調査で就職後に経験するリアリティショックと就労状況を把握する。先行要因とリアリティショックとの関連、さらに離職との関連を検討する。追跡調査の時期は、就職後3カ月後、6か月後、9か月後、12か月後とする。 先行要因として、就労イメージ、子ども観、自己効力感等を測定する。リアリティショックの把握には、27年度のヒアリングに基づき作成した予備尺度を用いる。調査データの項目分析を行い、本尺度として採用する項目を選定し、リアリティショックの程度を得点として算出する。 平成29年度は、28年度の結果をもとにリアリティショックの高リスク要因を抽出し、リアリティショック高リスク者への対策の検討と指針の作成を行い、「リアリティショック予防プログラム」を提案する。
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Causes of Carryover |
リアリティショック尺度の予備尺度を用いた調査を平成27年度中に実施し項目分析を行い、本尺度を完成する予定であったが、尺度項目作成のためのヒアリング調査に時間がかかってしまい、調査を平成28年度に持ち越すこととなった。そのため、調査質問紙の郵送費とデータ分析の人件費として予定していた27年度の使用額も、28年度に持ち越すこととなった。 ヒアリング調査に時間がかかった理由は、対象者を新卒で就職後1年目の保育士だけでなく、2年目以降の保育士まで広げたためであり、その結果、尺度項目に使用するリアリティショックの内容が多岐に渡ることとなり、リアリティショックを包括的に測定できる尺度の作成が期待できる。 新たな計画では、予備尺度を用いて就職後の保育士の追跡調査を行うことになる。本尺度より予備尺度のほうが項目数が多くなるため、リアリティショックを取りこぼしなく捕捉できることが期待できる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新卒で就職したばかりの保育士を対象に調査を行うが、調査にあたっては、保育施設に調査用紙を郵送し回答者からの返送を求める。追跡調査を4回実施予定であり、そこでは同様に調査用紙を郵送し回答の返送を求める。そのため、郵送費を必要とするが、当初計画していて延期せざるをえなかった27年度用の郵送費用を充当する。 予備尺度の項目分析のデータ入力の人件費が発生するため、27年度用の人件費を充当する。予備調査の項目分析等の結果を検討するため、研究分担者との打ち合わせを必要とするが、27年度用の交通費等を充当する。
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