2016 Fiscal Year Research-status Report
社交不安における自己注目の指標化と不安反応との関係
Project/Area Number |
15K13153
|
Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
藤原 裕弥 安田女子大学, 心理学部, 准教授 (20368822)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 自己注目 / 他者注目 / NIRS / サポートベクターマシン / 社交不安 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には、近赤外線光(NIRS)データに対してサポートベクターマシンを適用することで、自己注目状態と他者注目状態を機械学習させ、両者の識別が可能となるか検討し、自己注目状態と他者注目状態を識別できる可能性を示した。平成28年度には、平成27年度に検討した上記の識別法が、社交不安特性の違いや社交不安が喚起された状態でも適用可能か検討することを目的とした。 高社交不安者10名、低社交不安者7名を対象に、自己/他者参照課題各4試行、合計8試行のブロックを2回実施した。このうち1回は、模擬面接することを伝えることで社交不安気分を喚起した状況(高不安状況)で実施し、もう一方は模擬面接のことを伝えない状況(低不安状況)で実施した。実験中は、NIRS、ECG、SCRを連続測定した。各課題実施後、不安気分をSTAIによって測定した。実際に模擬面接は実施しなかった。 STAI得点に対する分散分析の結果、高不安状況の得点が低不安状況より高かったが、社交不安×不安状況の交互作用は認められなかった。この結果は、模擬面接教示によって不安が喚起されたことを表している。 ECGデータから算出した平均RR間隔に対する分散分析の結果、自己に注意を向けた場合、他者に向けた場合に比べてRR間隔が狭く、心拍数が高いことがわかった。 NIRSデータに対して、サポートベクターマシン(SVM)による自己/他者注目の識別を試みた。各個人の自己注目、他者注目時のNIRSデータに対して、自己注目時を+1、他者注目時を-1、その他の状態を0として、SVMによるパターン識別を行った。平成27年度同様に、個人ごとのデータを用いたSVMの結果、16名(1名はデータに欠損があったため分析から除外)において自己注目状態と他者注目状態の識別に成功した(分類精度:83.9~90.7%)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に行ったSVMは、自己注目時を+1、他者注目時を-1、その他の状態を0と定義する、3 stateで行った。このとき、自己/他者参照課題中の試行間の心的状態を便宜的に”その他の状態”としたが、”その他の状態”が同じ心的状態であるとは必ずしも言えない。そこで、平成28年度には、自己注目時と他者注目時のみを教師モデルとして使用するSVMを実施した。しかし、この分析では、自己注目状態と他者注目状態を識別することはできなかった。そこで、平成28年度データに対して、平成27年度同様に3 stateのSVMを実施したところ、80%以上の分類精度を確認することができた。このような教師モデルの違いによる結果が異なる原因を明らかにすることに多くの時間を費やすこととなった。ただし、現時点でも得られる結果が異なる理由はわかっていない。現在も原因を特定中であるが、このような理由で平成28年度に実施予定であった研究2を平成29年度に研究期限を延長して実施することとし、学術振興会に申請、承認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度、28年度の実験によって、社会不安者の自己注目、他者注目という心的状態を、NIRSデータを用いて識別することに成功した。そこで、平成29年度には、模擬面接場面を設け、他者に自己開示する場面での注意対象(自己・他者)の時間的変化を明らかにする。 高社交不安者と低社交不安者を対象とし、最初に自己/他者参照課題を16試行ずつランダムな順序で実施する。その後、参加者には見知らぬ他者と相互作用することを伝え、あらかじめビデオ録画しておいた見知らぬ他者(実験協力者)の自己紹介動画をモニタに呈示する。続いて、モニタには見知らぬ他者が話を聞いている動画を呈示している状態で、実験参加者(被験者)が自己紹介をする。実験を通じて、NIRSデータ、自律神経系データ、視線運動データを計測する。 自己/他者参照課題のNIRSデータに対してSVMによる自己注目と他者注目の識別を行い、作成された教師モデルに従って自己開示(自己紹介)中の注目対象の時間的変化を明らかにする。また、注意対象の時間的変化のグラフと自律神経系データ、視線運動データを重ね合わせることで、他者注目、自己注目のいずれが社交不安の喚起や増大に影響を及ぼしているのか検討する。
|