2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K13158
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
宮内 良太 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (30455852)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜木 祐史 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (00343187)
木谷 俊介 北陸大学, 未来創造学部, 助教 (70635367)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 耳音響放射 / 聴覚的注意 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,音が入力された時に耳から自発的に音が放射される耳音響放射を測定することで,聴取者の注意を客観的に推定することが可能かどうかを検討することである。 第一年度には,非常に小さな音圧である耳音響放射を精密測定するための測定装置を構築した。装置の接続方法,フィルタの係数,加算処理といった信号処理方法を検討することで,音圧レベルで 20 から 30 dB と非常に小さな耳音響放射を観測することが可能になった。 この装置を使って,音圧や周波数,呈示パターンの異なる音を呈示し,入力音による耳音響放射の変化を観測した。その結果,耳音響放射の非線形な成分が,音圧や周波数によって変化することがわかった。また,耳音響放射には,発生機序の異なる複数の成分が含まれており,単純に耳音響放射の全体の大きさを見るだけでなく,時間・周波数領域における変化を精密に観測する必要があることも示された。耳音響放射が何に起因して発生しているのかはまだ完全に解明されておらず,今回の結果は,複雑な耳音響放射の発生メカニズムを解明する手がかりになると考えられる。 一方で,入力音の呈示パターンを変えても,同じ音に対する耳音響放射は変化しないこともわかった。次年度に行う聴覚的な注意に関する実験では,単純に同じ音を繰り返すだけでなく,様々な音を組み合わせて注意を誘導し,その変化を観測する必要がある。注意を加味しない場合の耳音響放射の結果から,同じ音を呈示した時に耳音響放射の音響特徴が変化したとすれば,それが刺激の呈示パターンによる影響ではなく,注意の誘導による変化であると結論づけるための基礎が確立された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に示した耳音響放射の測定装置の構築は問題なく終了し,すでに実験を始めている。また,入力音の特徴を変化させた際の耳音響放射の変化を観測することで,これまで考えられてきた耳音響放射の発生メカニズムよりも複雑な処理機構が,耳音響放射によって明らかにできる可能性を示唆する興味深い結果も得られている。そのため,おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,研究計画書にもある通り,様々な音環境において耳音響放射を測定し,注意と耳音響放射との関連性について検討するためのデータベースを構築する。平成 27 年度の結果から,当初は予想していなかった,発生機序の異なる複数の成分が耳音響放射に含まれている可能性が示唆されたため,単純に耳音響放射を一つの現象として捉えて分析するのではなく,含まれる成分一つ一つの変化を細かく分析していくこととする。そのための信号処理技術についてはすでに初年度から新たに検討を始めており,研究計画書に記載した単純なスペクトル形状よりも詳細な音響特徴を発見できると考えている。 耳音響放射の特徴と聴覚的注意の関係性のモデル化については,当初は単純に結果を基にした現象観察的なモデルを想定していた。しかし,こちらについても,複数成分の変化を個別に分析することで,聴覚のメカニズムにより深く関係したモデルを構築できる可能性がある。今後は,聴覚末梢から脳にかけての上行性の処理と脳から聴覚末梢にかけての下行性の処理に関連付けられるようなモデルの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
平成27年度は,当初に予想していなかったような結果が表れており,慎重に研究を進めるために,実験装置の構築や初動実験の実施に注力した。そのため,学会発表が少なく旅費に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内会議中心に発表する予定であったが,新規性の高い結果が得られそうなため,国際会議への投稿を視野に入れて積極的に成果の発表を行う。そのための旅費や投稿費用として使用する。
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Research Products
(1 results)