2016 Fiscal Year Research-status Report
オキシトシンによるサルの援助行動の変化に関する実験的研究
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15K13159
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (30335062)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マーモセット / 社会性 / オキシトシン / モデル動物 / 向社会行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、社会性が高いことで知られるマーモセットとその自閉症モデルであるバルプロ酸暴露個体(VPA個体)が、愛着行動や向社会性を高める作用があることで知られるオキシトシンを投与することで、社会行動がどのように変化するかを検討する。 ホルモンは日内変動が大きいので、H28年度はホルモンのなかでも測定しやすいコルチゾールに注目し、安定してホルモンを抽出する方法を確定した。マーモセットは体の大きさに対して副腎の割合が大きく、ストレスに対する感受性が高いとされる。コルチゾールの測定は、血中、尿中などからの測定が用いられることが多いがヒトやイヌでは唾液でも測定できる。測定のストレスを軽減するためにマーモセットでも安定した唾液中のコルチゾールを測定することが望まれるが、そのためには、どのくらいの量の唾液をどのように採取するかが重要になる。そこで、マーモセットの唾液を採取するために適した綿棒のサイズを特定し、食べ物や液体などを付着させない綿棒を噛ませることによって1回につき40~70μlの唾液を安定して採取する方法を開発した。採取された唾液は40μlを5倍希釈し、EIAにて測定することで安定した測定値を得ることが明らかになった。この方法を用いることによってホームケージにいる状態で、いつでもマーモセットの通常状態(安静時)の唾液を採取することが出来る。血中のコルチゾール値と唾液中のコルチゾール値の変動が同様の傾向を示した。唾液中のコルチゾール値も日内変動があり、午前中が高く夕方は低下したが、VPA個体では日内変動がなかった。これは発達障害を抱える人がしばしばリズム障害を呈するのと対応している。 現在、オキシトシンの測定の着手しており、H29年度にはオキシトシンの値を測定できる環境を構築し、援助課題遂行中にオキシトシン投与がどのような影響を及ぼすか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的なターゲットのオキシトシンではないが、ホルモンの1つであるコルチゾールをマーモセットから非侵襲で安定して測定できる方法を確定した。この方法をもちいて、現在オキシトシンの抽出を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に実施したホルモン抽出方法により、平成29年度はオキシトシンの抽出を行う。これが安定して可能になれば、マーモセットに他個体援助課題を課し、その前にオキシトシンを投与する条件としない条件で、援助行動の成績を比較する。オキシトシン投与により、援助行動が増加するかを、体内のオキシトシンレベルをモニターしながら検証する。
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Causes of Carryover |
3年間の研究であり、基金であったために、最終年度までかけて研究を遂行できるように、次年度のための経費を残した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでに行った研究を発表するために学会発表を行う。そのための出張費や、論文を作成する際の翻訳料、および英文校閲料に使用する。テストステロンなどの試薬や分析のための経費を支出する。さらに、研究の進捗によっては研究補助員を雇用し、ホルモンの分析を加速させる。
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Research Products
(3 results)