2015 Fiscal Year Research-status Report
水中環境における空間認識：知覚・認知・行動実験によるマルチレベルアプローチ
| Project/Area Number |
15K13164
|
|---|
| Research Institution | Nihon Fukushi University |
|---|
Principal Investigator |
中村 信次 日本福祉大学, 全学教育センター, 教授 (30351084)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
| Keywords | 水中環境 / 空間認知 / 方向感覚 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
期初計画のとおり研究計画を推進した。平成27年度は、研究計画の初年度として、国内外の研究動向の精査、研究計画・目標設定の再設定等を行ったのち、主に、ダイバーが水中で、「今自分がどこにいて、どこに向かっているのか」をどの程度把握できていると考えているのかを計測可能な、水中ナビゲーション感覚尺度の構築に関わる研究を進めた。
尺度項目の選定にあたっては、豊富な経験を有する職業ダイバー8名に対し、水中でのナビゲーションに関するエピソードをヒアリングし、収集された事項の中で、多くのダイバーに共通して経験されるであろう事柄を選抜した。レクリエーショナルダイバー120名に対し質問紙調査を実施し、開発した水中ナビゲーション感覚尺度（Sense of Underwater Navigation; SUN）と、一般的な方向感覚の自己評定尺度である方向感覚質問紙（Sense of Direction Questionnaire; SDQ）とに対し回答を求めた。調査の結果、SUNとSDQとの間に、対応する下位項目も含め、中程度の正の相関が認められることから、SUNが一定程度の外部妥当性を有することが示された。また、ダイビング経験の浅い初心者ではSUNとSDQとの間の相関が高く、ダイビング経験が多い者ではそれが低くなることから、初心者は日常生活での自身の方向感覚に依存して水中でのナビゲーション感覚が形成される一方、経験者では水中環境固有の方向感覚が形成されることが示唆された。
上記研究の他、水中での認知地図形成に関わる行動実験の準備のため、熟練職業ダイバーの頭部に水中カメラを装着し、水中における経路探索行動のデータ取得を行った。また、水中での空間認識に関わる知覚実験（平成28年度以降実施予定）の際に用いる視覚刺激提示装置の試作、および、提示視覚画像の開発を行った。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
水中ナビゲーション感覚尺度に関しては、当初予定通り、尺度開発、調査実施、データ分析を進めており、おおむね順調に研究推進を実現できた。水中での方位感覚の変化（学習進展）に関し、興味深い知見が得られつつあり、今後、追加のデータ分析を進め、平成28年度中に論文の公開を行う。
平成27年度実施予定であった、水中環境での認知地図形成に関する行動実験については、海況の都合で実験実施を数回見送らざるを得ない状況が発生し、若干の遅れが生じている。平成27年度取得した経路探索行動のビデオ解析と合わせ、平成28年度水中環境での追加実験を実施することで遅延を回復させる予定である。
その他、平成28年度以降実施予定である知覚実験に関しては、順調にその準備を進めることができた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、水中環境における認知地図形成に関わる行動実験を継続する。ダイバーの水中探索時の目的地点探索行動（オリエンテーション）の様相を、ダイバーの主観視点で撮影されたビデオ画像を分析し、さらにそれを当該ダイバーに観察させ、経路探索時の施行プロトコルを採取することにより、詳細に分析していく。また、平成27年度の取り組みにより、水中知覚実験の準備が整いつつある。平成29年度実施計画の知覚実験（色恒常性測定による水中空間での照明推定の様態、ホロプター計測による観察者の空間知覚のゆがみの測定、視覚誘導性自己運動知覚の計測による水中環境での多感覚統合の分析）を、平成28年度試行的に開始する。
|
| Causes of Carryover |
平成27年度実施予定であった、水中環境での行動実験が、実施予定日の海況により複数回実施不可となり、実施を延期せざるを得なかった。そのため、実験実施場所への移動のための交通費や実験補助者への謝金等に未使用額が生じた。また、論文作成に際して、英語校正を英語圏在住の共同研究者に依頼し、その他経費に計上していた英文校正費を削減することができた。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度実施予定の水中実験実施に必要な費用に充てる。実験開始を1か月程度前倒しすることにより、天候の変化等の不足の事態にも対応可能とし、さらに実験回数を増加させることを可能とする。実験回数増加に伴う経費に関しては、平成27年度未使用経費を充当する。平成29来年度実施予定の水中知覚実験の前倒し試行も併せて実施し、経費の有効活用を図る。
|
Research Products
(6 results)
