2016 Fiscal Year Research-status Report
米国巨大財団の高等教育政策形成への影響の研究―コンピテンシー・ベースド教育の行方
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15K13175
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Research Institution | National Institute of Informatics |
Principal Investigator |
船守 美穂 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (70377141)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フィランソロピー / 高等教育政策 / インタミディアリー / 財団 / 大学中退率 / 政策形成 / 社会人学生 |
Outline of Annual Research Achievements |
米国巨大財団が高等教育政策に及ぼす影響について調べるため、高等教育に特化するルミナ財団およびその元で動くComplete College Americaというインタミディアリーを訪問した。またこれら財団と連携あるいは委託調査等を受けている高等教育関係の大学協会等(NCHEMS, WICHE, SHEEO)を訪問し、こうした財団の影響についての見方をインタビューした。 日本から見ると、米国の巨大財団は不当に高等教育政策に関与しているように見えるが、一方で米国の巨大財団は米国高等教育の最大の課題となっている中退率や社会人学生の問題を取り上げ、これについての解決方策を提示しており、社会の期待に応えているため、(極度にこれに注視しているという問題も指摘されている一方)、その活動は正統化されていることが分かった。 また政府は一般に、公平性や説明責任を担保する必要があり、また議会の方向性により左右されるため、社会における喫緊の課題に対して、解決を機動的に提供できないといった問題がある。米国巨大財団はこうした政府の機能不全に対して、業界外の立場から解決を提示できる社会的ツールとして米国社会ではみなされていることも分かった。 日本では、特に高等教育における政策形成において、政府が多大な影響力を行使している一方、財団や非営利団体については微弱な役割しか与えられていない。しかし米国において指摘されるような政府の機能不全は、日本においても見られることがあり、米国の巨大財団に類する、外圧をかけられるような団体が検討されても良い。しかし一方で、その影響力が十分に発揮されるためには、一定以上の財力や、当該団体がそのような行為を行うインセンティブ(たとえば税制免除等)、また社会がこうした財団の活動を評価、歓迎するという風土が必要であり、そうした団体の設立のみでは不十分であることには留意する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は米国巨大財団が連邦政府等の政策形成に及ぼす影響等を調査するものであるが、2017年1月にトランプ政権が発足し、連邦政府の政策形成の体制および方向性が混乱してしまったため、3月に予定していた政府へのインタビュー調査を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年度は、州政府および連邦政府の米国巨大財団の影響についての見方や、その影響のされ方について調査を行いたい。また一部の大学はこうした財団と政府のあいだをつなぐ役割を果たしており、これら大学のスタンスについても調査をしたい。
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Causes of Carryover |
ワシントンDCにて、米国巨大財団が連邦政府等の政策形成に及ぼす影響等を調査する予定であったが、2017年1月にトランプ政権が発足し、連邦政府の政策形成の体制および方向性が混乱してしまったため、3月に予定していた政府へのインタビュー調査を行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
トランプ政権の、特に高等教育分野における政策が安定した頃を見計らって、連邦政府へのインタビュー調査を行う予定である。
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