2015 Fiscal Year Research-status Report
〈ふり〉の教育哲学――教育的パフォーマンス論の深化と構築に向けた基礎的研究
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15K13184
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山岸 賢一郎 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20632623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 亜希子 近畿大学, 工学部, 講師 (60457413)
藤田 雄飛 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (90580738)
土戸 敏彦 神戸常盤大学, 教育学部, 教授 (30113096) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 〈ふり〉 / 教育哲学 / 道徳教育 / 演技 / 演劇 / 遂行 / 自律 / ルソー |
Outline of Annual Research Achievements |
少なくとも多くの場合、人間の営為は〈ふり〉である。つまり少なくとも多くの場合、人間の営為は、完全なる「遂行」でも完全なる「演技」でもありえず、「遂行」と「演技」の複合体たる〈ふり〉である。本研究は、以上のような〈ふり〉論の視座から、近現代の教育言説・教育実践と、それが基づくところの認識・思考の枠組みそれ自体を、問い直そうとするものである。 平成27年度は、いわば基礎的研究を行った。つまり近現代の教育思想・教育言説を、〈ふり〉論の視座から批判的に検討する作業を行った。この検討の対象としたのは、主に以下の4点である。(1)ルソーの礼儀作法論・演劇論・教育論。とりわけルソーの『ダランベール氏への手紙』における演劇論と『エミール』における教育論。(2)自律と教育をめぐる近現代の思想。とりわけカントの思想とその解釈を通じて教育学の世界に広く流布した、いわゆる「自律と他律のパラドクス」。(3)道徳教育に関わる諸言説。とりわけ小中学校における道徳授業資料(副読本、および『私たちの道徳』等の副教材)と、その活用法を記したテクスト。また、学校現場における、道徳授業資料の実際の活用の仕方。(4)〈ふり〉の発達に関わるテクストとして、ラカンが描いた鏡像段階論、および鏡像段階論をめぐるメルロ=ポンティの思索。 これら4点に関する本研究グループの思索の過程と、その成果の一部については、九州教育学会におけるラウンドテーブル、日本教育学会における2つの個人研究発表、「〈ふり〉の教育哲学3.5」と題する論文1本において、報告・発表を行っている。また、(3)については、長崎県内および大阪市内の小中学校における道徳授業参観・研究協議等への参加を通じて、現場の教師との意見交換を継続的に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究は「おおむね順調に進展している」。その理由は、以下のとおりである。 (1)平成26年度以前、つまり科学研究費を申請する以前から、すでに一定程度以上の資料収集、および資料の検討を行っていたこと。また、平成26年度以前から、研究会等を通じて、本研究グループに属する個々人の思索、および研究グループ全体の思索が、深まりつつあったこと。 (2)(1)の影響もあり、平成27年度には、研究グループに属する個々人および研究グループ全体の思索が、当初の計画以上に深まったこと。またそれにより、当初の計画よりも早く、学会発表や論文の形で、研究成果の一部の発表・報告が可能となったこと。つまり、思索の深まりと、研究成果の発表・報告という点について言えば、本研究は「当初の計画以上に進展している」とさえ言えること。 (3)(2)の影響により、当初計画したほどには、資料収集に力を割くことができなかったこと。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、引き続き基礎的研究に取り組みながらも、発展的研究に取り組む。 基礎的研究に関して言えば、平成27年度に引き続いて、近現代の教育思想・教育言説を、〈ふり〉論の視座から批判的に検討する作業を行う。また、この作業に関連して、ルソー関連の資料や、道徳授業に関わる資料や実践事例など、更なる資料収集を行う。 発展的研究に関して言えば、基礎的研究の成果とパフォーマンス論の文脈とを踏まえつつ、〈ふり〉概念を精緻化し、〈ふり〉論を体系化する作業に取り組む。すなわち、第一に、本研究グループのメンバー各人の研究成果を踏まえて、土戸敏彦が提起した〈ふり〉概念と〈ふり〉論とを批判的に再構成し、理論化することを試みる。また、第二に、パフォーマンスに関わる先行研究、たとえば藤川信夫らのドラマトゥルギー研究等の文脈を意識しながら〈ふり〉論を再検討し、〈ふり〉の精緻化・理論化を試みる。 これらの研究の過程と成果については、平成27年度に引き続き、随時、日本教育学会、九州教育学会、教育思想史学会等において発表・報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度には、研究グループに属する個々人および研究グループ全体の思索が、当初の計画以上に深まり、当初の計画よりも早く、学会発表や論文の形で、研究成果の一部の発表・報告が可能となった。ただし、この影響で、当初計画したほどには、資料収集に、具体的にはルソー関連資料や道徳授業の実践事例などの収集に、力を割くことができなかった。このため、主に海外渡航を含む旅費の差額が、未使用額として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、資料収集、具体的にはルソー関連資料や道徳授業の実践事例などの収集に力を割く予定であり、したがって上記の未使用額をこれに充てる予定である。
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Research Products
(6 results)