2016 Fiscal Year Research-status Report
〈ふり〉の教育哲学――教育的パフォーマンス論の深化と構築に向けた基礎的研究
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15K13184
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山岸 賢一郎 長崎大学, 教育学部, 准教授 (20632623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 亜希子 近畿大学, 工学部, 准教授 (60457413)
藤田 雄飛 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (90580738)
土戸 敏彦 神戸常盤大学, 教育学部こども教育学科, 教授 (30113096) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 〈ふり〉 / 教育哲学 / 道徳教育 / 演技 / 演劇 / 遂行 / 自律 / ルソー |
Outline of Annual Research Achievements |
人間の営為を、〈ふり〉として捉え直すこと。つまり、人間の営為を、完全なる「遂行」でも完全なる「演技」でもないものとして、「遂行」と「演技」の連続体の上に位置づくものとして、捉え直すこと。本研究は以上に素描するような〈ふり〉研究の立場から、近現代の教育言説・教育実践を、ひいてはそれらが基づくところの認識・思考の枠組みそれ自体を、問い直そうとするものである。 平成28年度は、前年度の基礎的研究に基づき、発展的研究を行った。より具体的には、第一に、研究グループの構成員の各自が、〈ふり〉研究の視座から各々の研究対象に関する論究を深めることを試みた。その結果、とくに以下の3点について進展が見られた。(1)ルソーのテクストの分析、とりわけ『ダランベール氏への手紙』における演劇論と『エミール』における教育論に通底する思想に関する論究。(2)道徳教育においてしばしば見出される、「心の弱さ」を乗り越えて「本当の自分」と向き合うことを推奨する言説の分析。とりわけ道徳授業資料とその活用方法を論じたテクストの分析。(3)遂行性と演技性の両義性を併せ持つ〈ふり〉の発生を、諸個人に帰属させることなく、相互行為者たちが形作る舞台の上で生じる「意味」として読み解く作業。 また、第二に、以上のようにして深められた論究を構成員同士で突き合わせながら、〈ふり〉概念および〈ふり〉論の精緻化を試みた。この総論の精緻化の試みは、各論の追究とともに、次年度も継続して行う予定である。 なお、以上の研究成果の一部については、第75回日本教育学会ラウンドテーブルや第26回教育思想史学会コロキウムにおける発表、長崎大学教育学部紀要に掲載された論文において、発表・報告を行っている。また、上述の(2)については、長崎県内の小中学校への道徳授業参観および研究協議等への参加を通じて、現場の教師たちとの意見交流を継続的に行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究は「おおむね順調に進展している」。この理由は、以下のとおりである。 (1)平成28年度には、昨年度に引き続き、研究グループに属する個々人、および研究グループ全体の思索が、当初の計画以上に深まった。これにより、当初の計画よりも相当早いペースで、学会発表や論文によって、研究成果の一部の発表・報告が可能になった。 (2)「教育と福祉のドラマトゥルギー」(研究課題/領域番号25285213)について探究を行っている、藤川信夫氏を中心とする研究グループは、その舞台論および演技論において、本研究グループと一部共通する課題認識を持つ。この研究グループと議論を交わしつつ、第26回教育思想史学会コロキウムにおいて、共同で研究成果の一部の発表・報告を行うことができた。 (3)上記の(1)および(2)の影響により、当初の計画したほどには資料収集に力を割くことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、これまで以上に研究成果の報告に力を入れつつ、研究の総括を行う。また、舞台論および演技論について論究する他の研究グループとの研究交流も昨年度以上に行うことで、研究成果の報告や総括に反映させたいと考える。 研究成果の報告については、研究グループの各人が学会発表を行うとともに、論文の形で公表する予定である。学会発表については、日本道徳教育方法学会、教育哲学会、九州教育学会、等での発表を予定している。また、論文については、とりわけ、『ダランベール氏への手紙』および『エミール』におけるルソーの思索を〈ふり〉論から読み解く試みと、道徳教育に関わる諸テクストを〈ふり〉という視座から批判的に検討する試みについては、すでに論文の執筆の過程にある。 研究の総括については、〈ふり〉論が、教育思想・教育実践にもたらしうるものについて検討・総括しつつ、報告書としてまとめ上げる予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度には、当初予定していた以上のペースで学会発表を行うことになり、また当初の予定にはなかった、他の研究グループとの共同発表も行った。ただし、この影響で、資料収集に力を割くことが困難になった。このため、主に旅費および物品費において未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、これまで以上に研究成果の報告に力を入れる予定であり、このための資料収集費および学会旅費(日本道徳教育方法学会、教育哲学会等)が必要となる。しがたって、上記の未使用額をこれに当てる予定である。
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Research Products
(5 results)