2015 Fiscal Year Research-status Report
身体と言語に関する研究－「書」と書論の記号学的分析を通じて－
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15K13193
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| Research Institution | Tokoha University |
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Principal Investigator |
古市 将樹 常葉大学, 教育学部, 准教授 (30557301)
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2015-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 言語 / 身体 / ロラン・バルト / 記号学 / 書 / 書論 / 空海 / かな |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は言語が身体と不可分であることを明らかにし、それに基づいた「言語活動」の教育を考案することを目的とする。そのために「書論」および「書」に着目した。「書」には、一般性・普遍性を有する共通コードとしての言語（文字）を用いながら、書き手の個性的な身体が投影されているという認識のもと、「書論」において、そのような「書」の優劣および「書く」実践が、「能書」を手本とすることを通じて教えられてきた歴史に注目し、そこにある一種の価値基準の生成過程やそれがいかにして実践に結びつくのかを、バルト（Roland Barthes）を中心とした記号学の知見を用いて明らかにする。
平成27年度は、ラング／パロール、シニファン／シニフィエ、エクリチュール／パロール、身体／言語さらに、デノタシオン（メッセージ）／コノタシオン（メタ・メッセージ）、教養／方法など、記号学の中で対になっている分析的な概念を整理するとともに、バルトがおこなってきた、小説、評論、テクスト、写真、映画、絵画、モード、言説、文学などに文化的現象に関する研究を総体的にまとめ、本研究の参考とすべくその分析手法の抽出を試みた。それと並行して、「書論」とそれの先行研究の入手・分析、能書および各能筆の「書」の歴史や評価に関するデータベース化、さらには美術館・博物館などで展示された真筆（「伝」を含む）の調査をおこなった。その結果、現在、様々な図録や画像公開システムを通じて「書」を観ることができるが、それではわかりにくい、直に真筆を観なければ感じ取れない迫力とでもいうべきものがあると感じた。このことは書家などからの専門的助言としても聞き及んでいたが、いくつもの真筆を観ることで少しはわかってきたのかもしれない。そしそうであれば、真筆でなければわからないものは何なのかを言語化すること自体が、書論において試みられたことに通ずると考えられる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実地調査の結果、印刷されたりデジタル画像として公開されたりした「書」と、直に見る真筆との違いの大きさを実感したため。また、本研究で分析対象としている「書」の多くが、国宝や重文であるが、展示会などそれらを見る機会が当初の予想以上に限られているため。さらに、事前事後の準備を含めて、ひとつひとつの「書」に時間をかけてじっくり観察・調査することが必要で、特別展など一度に多くの「書」が展示される場合であっても、結局は多くの対象を分析することが難しいため。
研究の途中で、画像解析ソフトを用いて「書」を解析し、「能書」の「能」に相当する部分の可視化ができないかと考え、ソフト自体の慣熟や、「散らし」「連綿」など従来「書」の判断に使用されてきた評価の基準をいかにソフトの仕様に反映させるかなどの作業が加わったため。
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| Strategy for Future Research Activity |
当初「書論」に記された能書約50人を分析対象としてリストアップして、そのすべての「書」を調査する予定にしていたが、本年度の経験からすると、研究期間内に直接調査できる対象はかなり限られる可能性が高いため、対象とする能書に優先順位をつけて絞り込むことをおこなう。印刷や画像からでは難しい、直に真筆を見ることでわかる・感じることをいかに言語化できるか、本研究では、「書論」においてはそのためにどのような工夫がなされてきたかを記号学的に分析する予定であるが、言語化に加えてなんとか可視化したい。どうすればそれができるかが課題となる。
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| Causes of Carryover |
京都国立博物館が工事のために書跡の展示がしばらくなかったことをはじめ、その他の博物館・美術館の展示期間と調査可能日程が合わず、当初予定していたほど実地調査に赴くことができなかったため。また研究途中で、専門的知見を有する研究者の助言などから、当初考えていたよりも、より適した画像解析へ分析手法の変更を思案することとなり、それにともなって予定していたパソコンの購入を延期したため。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度実施できなかった調査分を含め実地調査を増やす予定。また、新たな画像解析に適したスペックのパソコンを再度選考して購入する予定。
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Research Products
(1 results)
