2015 Fiscal Year Research-status Report
文化装置としての「師弟関係」に関する歴史社会学的研究
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15K13202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲垣 恭子 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40159934)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 師弟関係 / 歴史社会学 / 教育社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「師弟関係」をキーワードに、伝統的な師弟制度から現代のメディアを介した間接的で私的な「師弟関係」(「私淑」)まで視野に入れ、文化装置としての「師弟関係」の意味とその変容の過程を歴史社会学的な角度から明らかにすることを目的としている。より具体的には、(1)「師弟関係」の類型とその変容をとらえる理論枠組の設定(2)師弟関係をめぐる表象分析、(3)自伝資料を用いた量的・質的分析及び質問紙調査によって、制度化された「師弟関係」から「私淑」を含む多様な「師弟関係」について実証的に明らかにしようとしている。 初年度にあたる本年度は、研究全体の理論的枠組み、分析枠組みの検討を行い、自伝資料の量的分析を行なうと同時に、師弟関係をめぐる表象分析のための資料収集に着手した。 理論枠組、分析枠組については、師弟関係の「原型」、「ツール型」、「私淑型」の特徴を抽出するための分析視点を設定した。 それに基づいて、『私の履歴書』(日本経済新聞社)における師弟関係について、各「界」ごとにそれぞれの師弟関係の特徴について分析を進めた。 師弟関係の表象分析のための師弟論、人生論、小説などの資料を収集し、各「界」ごとに整理する作業に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
伝統的な師弟関係から現代の師弟関係までを射程に入れた全体の理論枠組の検討から、各類型の特徴を明らかにするための分析枠組の検討、設定を行なった上で、具体的な資料分析を進めることができた。『私の履歴書』を資料とした量的分析においては、各「界」ごとの特徴を抽出し、その成果を公表することができた。また、個別資料の補強、収集も順調に進んでいる。 以上より、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果をふまえて、さらに個別資料の収集と分析を進め、各「界」における師弟関係の特徴とその変容の過程をさらに詳細に分析する。とくに、①伝統的な師弟関係が制度化されてきた芸術、芸能の世界の師弟関係の事例分析 ②人文系学問分野における師弟関係の事例分析 ③私淑の事例分析 に焦点をあてて検討する。それらの結果を合わせて、師弟関係をめぐるドラマを社会学的な視点から分析する予定である。
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Causes of Carryover |
資料、文献について他大学等からの借用などにより物品購入(図書購入)に若干の余裕が生じたことと、資料整理にかかる謝金に余裕がでたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、資料収集と分析に関する費用がかかることが予想されるため、当初予定よりも旅費、謝金に多めに使用する予定である。
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Research Products
(12 results)