2016 Fiscal Year Research-status Report
文化装置としての「師弟関係」に関する歴史社会学的研究
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15K13202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
稲垣 恭子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (40159934)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 師弟関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、師弟関係の各類型の特徴についての以下のような事例分析を行った。 (1)伝統芸能・芸術界における師弟関係の事例分析:落語、講談、染織、日本画、料理等における師弟関係について、それぞれ具体的な人物を取り上げ、自伝資料などの分析とインタビュー調査を基に、共通点やそれぞれの世界の特徴について分析した。 (2)学問界における師弟関係の事例分析:主として法学、文学、経済学、教育学の分野における師弟関係の特徴について、事例をもとに分析した。 (3)財界人と師弟関係の事例分析:企業規模、学歴による財界人の師弟関係の特徴について、いくつかの事例をもとに分析した。 (4)(1)~(3)の事例分析を総合し、師弟関係の光と影について考察した。まず、伝統芸能や芸術の世界においては、師弟関係が制度を支える重要な軸になっていること、包括的・情誼の関係である点では伝統的である一方、昇進や地位における合理性を伴ったしくみであることが明らかになった。一方、学問界においては、合理的、近代的な関係であることを前提としつつ、学問の継承という点で伝統的な師弟関係の側面を合わせもつこと、それが生み出す独特の師弟愛と確執について考察した。財界人の師弟関係においては、とくに学歴による師弟関係の重要性や語りかたに大きな差があること、それが財界におけるネットワークとして機能することなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画として予定していた内容について分析と考察を進め、その結果を論文等の形でまとめることができた。 以上より、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を総合的な観点からまとめると同時に、現代の師弟関係について、とくにメディアとの関係を軸に分析・考察をすすめる。それらを合わせて、著書としてまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
物品購入(図書購入)が年度内に間に合わなかった為と、資料整理にかかる謝金に余裕が出たことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は最終年度にあたるため、資料の整理、データ分析等についての謝金および成果報告にかかる旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(17 results)