2016 Fiscal Year Research-status Report
日本発アイドル養成と中国青少年の主体形成に関する実証的研究
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15K13216
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
登坂 学 九州保健福祉大学, 保健科学部, 准教授 (50308144)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本型アイドル養成団体 / 青少年の夢 / 居場所 / 主体形成 / オタク / フォーマルな教育 / ノンフォーマルな教育 / インフォーマルな教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の当初の目的は、「クール・ジャパン」の一翼を担う芸能界に注目し、その受容・消費国の一つである中国社会における影響を、上海に展開するアイドル養成団体を具体事例として微視的・実証的に分析することであった。 研究者の興味は商業活動としてのアイドル集団の輸出や営業活動のプロセス及び経営・運営の方法論にあるのではなく、アイドルを志願し懸命に修練する少女たちや、それを応援するファンの成長過程、つまり芸能活動への関わりを通じて主体形成する中国青少年の内面であった。そこから、①日本発アイドル集団及び養成システムの持つ教育的機能、②民族的差異やイデオロギーに関わりなく人々の共感を育む芸能の持つヒューマニティ、③21世紀における国際共生実現の一つのヒント、等を見出すことであった。 これらについては1年目に発表した論文及びそれを土台に新しい視点と資料を盛り込んでまとめ、2年目に行った学会報告において、未だ実証は不十分であるとはいえその一端を公表することができた。 ところが研究を深めていくと、当該国の政治・経済当局の指導とその下で展開される経営・運営の在り様が実は青少年の心の状態に相当影響を与えているという現実に直面することとなった。つまり出自は同くするグループであっても、一国の政治・経済の教育的機能によって文化を作る者たちとそれを消費する若者の心は変容していくという一面である。その原因の一つがこれまでの論考でも取り上げた中国当局の「本土化」政策である。これにより当初考えていた日中間の文化交流がもたらす共通認識が揺らぎ、若者たちの相互交流が分断されているという現実がある。 国家や経済の思惑により青少年の気持ちがないがしろにされているとしたら、これは日中間の文化交流に内在するネガティブな側面であり、一つのリスクとしても認識され研究されなければならないだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究が遅れたのは以下の理由による。 1)遠因の一つに学部の配置換えがあり、それに伴う学内業務の繁忙化があった。当面新旧双方の学務をこなす必要があり、落ち着いて研究をすることが困難となった。校務及び教育に時間にことのほか時間を費やし、研究時間が確保できなかったというのが理由である。これは当初予期したエフォートが実現できなかったということであり、大きな反省点となる。一人で行う人文系の研究の弱点が露呈したということだろう。ただし如何に時間がなくとも、当初の研究計画を遂行するのが研究者の使命だと考えると慙愧に耐えない。 2)健康上の理由。昨年夏以来、体調を崩し、多忙のため本来2回予定していたフィールドワークが1回しか実施できず、しかもそのわずか1回の機会にも思い通り所期の研究項目を実施することが困難となったため。それに伴い予算の執行も満足にできない状況であった。 3)現地調査実施のための環境醸成はすでに現地にできているものの、上記(1)(2)の理由により、調査に必要な質問票調査及びインタビュー調査等の倫理委員会への申請書作成もままならず、2年目に計画していた現地調査が実施できなかったこと、その結果、1年目と同様の文献調査のみを行うしかなかったことが研究の遅延に繋がった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記進捗状況に照らし、研究3年目では次の通り研究を推進していきたい。 1)配置換えを経験して二年目の今年は自分の時間を確保し所期のエフォートを順守する。人手不足の折から所属する新旧学部の業務は軽減することは難しいものの、学部長及び学科長との連携をうまくとり、研究時間の捻出に鋭意努力したい。 2)健康の維持は研究活動の基礎であることから、規則正しい生活とバランスのとれた栄養摂取を心掛け、適度な運動を継続したい。また保健師による健康指導を受け、成人病の予防に努めたい。現在続けている週二回のスポーツ(卓球)を出来れば3回に増やし継続したい。 3)早急に倫理審査委員会へ提出する申請書を作成し、審査を受けて承認を得たのち、現地における質問紙及びインタビュー調査を実施したい。その現地調査で得た一次資料を基に論文執筆を最大限進めていきたい。
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Causes of Carryover |
比較的まとまった額が未執行であったのは、次の理由によるところが大きい。 1)校務繁忙及び体調不良によるフィールドワーク1回分の未実施 2)購入予定であった書籍等の未購入
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を進捗させるため、学内手続きを確実に行ったのち、次の研究活動の実施或いはそれに伴う物品購入のための予算執行を行う。 (1)夏季休業、冬季休業、春季休業等を利用した中国におけるフィールドワークの実施。そのための旅費・日当及び研究協力者に対する謝礼。(2)購入予定であった統計資料等一次資料等の購入。(3)論文執筆に必要なAO機器に不可欠なサプライ製品(ドラムユニット、インク、コピー用紙)等の購入。
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Research Products
(1 results)