2016 Fiscal Year Research-status Report
言語力の育成に効果をもたらす教材開発-ICTの活用-
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15K13238
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
本田 容子 盛岡大学, 文学部, 准教授 (30548110)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ICT / 書字教育 / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究の目的 言語活動の充実の一環として、国語科「書くこと」の立場から言語力の育成に効果をもたらす教材開発を主たる目的とする。「書くこと」が視覚的に理解されると、思考力・言語力に大きな影響を与えることが考えられる。電子黒板やタブレット型PC(iPad)による教材開発を踏まえ論理的な思考を広げ、言語力の陶冶を目指す。 2.研究の取組 今年度の具体的な内容としては、前年度の電子黒板の使用状況や現状に対する教員に対するアンケート調査を受けて実態の把握を踏まえた教材開発を行った。小学校の国語科教育においては ICTの活用と電子黒板の充足率とが関連しており、電子黒板の使用率は低いということが明らかとなった。これにより、電子黒板の有用性を高めるためにも教材開発を優先的に取り組むことが喫緊の課題であると考え、教材開発を行うことに重点化した。 3.教材開発 先ず、ICTシステムの構築という教材開発の基盤となる理論の構築を図った。また、できる限り多角的な視点からの分析が必要であり、研究分野の研究協力者から支援を受ける必要があった。具体的には、工学・認知科学的側面からプリンスオブソンクラー大学の沓名健一郎氏(生体情報・教育工学)を研究協力者とし、新しい教材開発における指導方法の確立を目指し、科学的な分析とソフトの開発を進めることができた。 4.教育への対応 他大学の各分野の専門家及び研究協力者との協力の下、形の科学会で「文字教育におけるICT の活用」で研究発表を行い、その他の競争的資金においてイギリスの小学校や日本人学校、タイの小・中学校・高等学校・大学への視察・研究授業を行うことができた。これらの研究を基に、授業方法の一環として開発したアプリを次年度以降、高等学校または小・中学校の児童生徒を対象にICTの授業を展開していくことを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度までの進捗状況として当初の計画以上に進展しているとする理由は、ICTの教材開発が順調に進んだこと、他の研究資金との連携を受けて海外への足がかりができたこと、また積極的に研究発表を行うことができたことの3点である。 1.教材開発 研究協力者である、現在はプリンスオブソンクラー大学の沓名健一郎氏(生体情報・教育工学)と共に進めていた教材開発が順調に進んだことが大きい。前年度の科学的な分析を受け、工学・認知科学的側面からソフトの開発を進めることができた。 2.国際的な取組 他の助成研究と連携して海外への足がかりができたことが成果として挙げられる。具体的には、本年度に盛岡大学学術研究助成金「文字文化の継承―海外における書道ワークショップ―」という研究活動を通してイギリスのロンドン日本人学校で書道のワークショップを行った。それにより、ロンドンの小学校(日本語プログラムの授業)と本研究との連携を図ることができた。また、タイのICT教育の環境についても調査を行った。 3.研究の具体化 本年度も昨年度と同様、国内外において研究発表を積極的に発表することができたと言える。例えば、国内においては全国大学書写書道教育学会では「ICTの活用による書字能力に関する研究―資質・能力の育成という視点から―」、形の科学会では「文字教育におけるICT の活用」、また全国大学国語教育学会では「ICTを活用した書字能力の向上に関する研究 」を発表した。これより、アプリケーションソフトの開発について理論的に説明し、書字教育のICTの活用の可能性を提言することができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
全国大学書写書道教育学会及び形の科学会にて研究発表を行う。また、一昨年度のアンケート調査、昨年度の研究結果を受けて具体的なICT教材の開発及び授業研究を行う予定である。 ICT教材については、スクリーンとなるホワイトボードとPC及びビデオプロジェクタという汎用的な機器だけを用いたICTシステムを構築し、実証研究を行う。国語科書写において言語力を育成するために、デジタル教科書の中の教材を投影したスクリーンから知識を得ることが、従来のノート・ワークシートに書いて考えることへと代替できる働きとなるかについて検証したい。また、ホワイトボードを用いて児童生徒が一斉に効果の高い授業を受けることができる方法について考察する。 本来、筆を使う毛筆学習を学ぶことこそが、筆脈をおさえ字形を学ぶこととなる。ここで我々は「筆路」に着目し、大きなホワイトボードに投影することが書いた経験をイメージしやすい学習方法として効果の得られやすい方法であろうと考えた。脳科学的にも視覚的に大きなイメージは記憶及び体感的情動に影響力を持つことが分かっている。よって、大きなホワイトボードを用いた授業方法の開発を通して、ICTの方策を考察したい。 このシステムが実現すれば、電子黒板を使用する授業展開について、モデル化が容易になると考えている。この研究成果を用いた授業を構築した場合、アクティブラーニングの手法を通したモデル授業への応用など、言語力の育成と国語科「書くこと」における革新的な学習方策を提言できる。 これらの研究発表を通して国語科「書くこと」によるICT機器の効果的な利活用について小・中学校及び高等学校の教員や情報科学や教育工学などの他分野の研究者・研究機関との円滑な連携・協力がより一層図られることを目指す。
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Causes of Carryover |
前年度にビデオプロジェクターを購入する予定であったが、理論的検証等に時間をかけたため実際に使用する計画は研究授業等が本年度となり、購入を先延ばしにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ICTを利活用した授業の実証研究のため、ビデオプロジェクターを使用する。 前年度まで、国語科「書くこと」のICTを用いた授業方策について理論的に研究を行った。その結果、いくつかの論点について焦点化することが可能であることがわかり、デジタル教科書についての授業研究が重要であることから本年度購入して授業研究に用いる。
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