2016 Fiscal Year Research-status Report
高等教育における障がい学生を対象とした試験時間延長の不公平を是正する基礎的研究
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15K13254
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
坊岡 正之 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (90352012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥 英久 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (30248207)
Scheller Andreas 広島国際大学, 医療福祉学部, 准教授 (80324739)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 障害学生支援 / 試験時間延長 / 精神的作業負担 / マークシート |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度実施した試験時間延長の実態調査を踏まえ、試験時間の構成要素についての考察を行った。試験時間(T)は、構成要素ごとに記述すると下記の式で示すことが出来る。 T=R+Th+W+α ・・・(試験時間の構成要素) [ここで、(R)は問題を読む時間、(Th)は解答を考える(選択する)時間、(W)は解答を書く時間、(α)は、試験用紙の頁をめくる、筆記用具を取り出す、解答を確認する、等の付帯時間を示す。] これらの要素のなかで、(Th)は個々人によって変化する要素で障害の有無に関係しないと考えられる。(α)については、頁がめくりやすい試験用紙を準備することや、書きやすい筆記用具を準備することが重要で有り、試験時間延長で対応するべき課題では無いと考えられる。その結果、(R)(W)の二つの構成要素が、障害の状態に関係すると考えら、これらの状態に対応した試験時間延長が必要である。 本年度は、「(W)は解答を書く時間」の構成要素について、解答方式の違いによる必要とする時間変化と、作業負担について評価を行った。今回は、広く一般的に用いられているマークシート解答方式を対象とし、具体的には障害の無い学生30名を対象に模擬問題による試験を行い、①試験用紙に直接解答を記入する、②マークシートに直接解答を記入する、③使用するマークシートに対応した補助具を使用して解答を記入する、の3つの方式について、その所要時間と精神的作業負荷について評価した。 結果は、試験用紙に直接解答を記入する方式に比べて、マークシートを使用する場合の方が解答時間が増加しており、具体的には1.9倍であった。また同様に、NASA-TLXにより解答方式の違いによる精神的な負担を評価した結果、マークシート方式の方が作業負担が増加する傾向が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
試験時間の構成要素の一つである、「(R)は問題を読む時間」については、音声認識ソフトウェア”ドラゴンスピーチ”を購入し評価試験を行う予定であったが、準備したモバイルPCとの相性が良くなく動作が不安定で実験を行えていない。なお同評価実験で使用予定のUSBスイッチボックスは完動している。 また、「(W)は解答を書く時間」においても、障害のある学生を対象に評価試験を実施予定であるが、現在障害のある学生に協力を依頼中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の評価実験で得られたデータを、“Usability of Optical Mark Reader Sheet as an Answering Tool in Testing”にまとめ、2017年9月にイギリスで開催される”AAATE2017:Association for the Advancement of Assistive Technology in Europe”で発表を行う予定である。 平成29年度は、試験時間の構成要素の一つである、「(R)は問題を読む時間」と「(W)は解答を書く時間」について、上肢に肢体不自由のある学生を対象に、模擬問題による評価を行いデータを収集する予定である。これらのデータから、適正な試験時間延長のための評価関数を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた会議を、インターネットで行ったため、旅費に残額が発生した。また、障害のある学生を対象にした評価実験では、本人に対する謝金と、実験を補助するアルバイトを予定していたが、評価実験の対象者がいなかったので,行えなかった。そのため、人件費・謝金に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
人件費・謝金については、実験協力者への謝金および実験補助のアルバイトへの人件費として使用予定である。人件費・謝金、その他の残額については、AAATE2017での発表に関する旅費として流用する予定である。
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