2015 Fiscal Year Research-status Report
発達障害のある学生に対する効果的な「キャリア意思決定」のあり方に関する研究
Project/Area Number |
15K13258
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
榎本 容子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 福祉機器開発部, 客員研究員 (00510596)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 発達障害 / 大学 / キャリアセンター / キャリア意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、キャリアセンターにおける発達障害の学生の効果的な「キャリア意思決定を促す相談支援プロセス」を解明すること(目的1)、また、「支援者がそれらの知見を相談時に活用できるツール」を開発すること(目的2)を目的とする。平成27年度は、(1)前年度に研究協力団体と協働で実施した「キャリアセンターにおける発達障害の学生への支援に関する実態調査」の解析、及び、(2)「キャリアセンターの支援者等に対するヒアリング調査」を行った。(1)では、キャリアセンターの支援者の発達障害の学生の特徴の認識状況と、そのような学生に対する各種支援の実施状況との関連を分析した。支援者からみた発達障害の学生の特徴としては、因子分析の結果、【就職活動への積極性の乏しさ】【働く価値観の不明確さ】【就職の著しい困難さ】【精神面の不安定さ】【認知処理能力の弱さ】の5因子が把握された。5因子の認識度の評定と各種支援の実施頻度の評定との関係について偏相関係数を算出した結果(制御変数:大学の属性)、【精神面の不安定さ因子】と「連携体制の構築」、【認知処理能力の弱さ因子】と「自己理解を促す支援」、「連携体制の構築」に有意な正の相関が認められ、支援の促進に関連する要因について基礎的知見が得られた。(2)では、発達障害の学生の支援経験のあるキャリアセンターの支援者4名、キャリアセンター等との連携経験のある就労支援者4名へのヒアリング調査を行った。その結果、キャリアセンターの支援者は、学生のコミュ二ケーションや作文力の課題から発達障害の疑いを抱きつつも、学生が自ら求めない限りは、特別な支援の提供が難しい状況が把握された。今後開発が有用なツールとしては、支援者が発達障害の学生の特徴に気づいたり、そのような学生への支援のポイントや学生に紹介できる支援機関について分かりやすく学べたりするテキスト等が把握された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記2点から、概ね当初の計画通りに研究が遂行されていると考える。 ・キャリアセンターにおける発達障害の学生への効果的な「キャリア意思決定を促す相談支援プロセス」を検討するにあたり、(1)「キャリアセンターにおける発達障害の学生への支援に関する実態調査」の統計解析で得た知見について、(2)「キャリアセンターの支援者等に対するヒアリング調査」から得た質的知見から、実態調査の結果を支持する知見や、実態調査の結果の考察を深める知見を把握することができた。これにより、相談支援プロセスのどの部分において課題が生じ、どのような支援の提供が求められるかに関する仮説モデルの考案につながった。 ・支援に役立つツールの開発にあたり、(2)のヒアリング時に、どのような支援ツールであれば利用可能であるか、支援者のニーズを把握することができた。また、研究代表者が過去の研究にて開発したイラスト教材(例:各種就労支援機関の種類についてイラストにて分かりやすく説明したもの)の一部を呈示し、その利用可能性について聴取したところ、一部改変により利用可能であることが把握された。これにより、今後開発予定の支援ツールの構想を具体的に深めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、下記3点の方策により、研究目的の達成を図っていく。 ・第2四半期までヒアリング調査を継続し(キャリアセンターの支援者2名、就労支援者1名)、「キャリア意思決定を促す相談支援プロセス」の仮説モデルの考案に役立つ知見をさらに蓄積していく。 ・平成27年度に得た知見を踏まえ、支援ツールの具体的な開発に着手する。現場にとって使いやすいツールとなるよう、開発委員会を組織し(大学の支援者、就労支援者等から構成)、ツールのあり方について協議していく。これにより、理論と実践の両輪から支援ツールの開発を進めていく。 ・平成27年度に得た知見をもとに、全国の大学のキャリアセンター(約700校)を対象とした質問紙調査を実施し、「キャリア意思決定を促す相談支援プロセス」の仮説モデルの構築・検証を図っていく。また、試作したツール案(一部)を調査票に盛り込み、現場の支援者のニーズの反映に役立つ情報を収集する。
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Causes of Carryover |
・平成28年度に実施する支援ツールの開発、キャリアセンターへの質問紙調査の実施にあたり、十分な予算を確保するため、まずは研究代表者が所属する機関の近郊にてヒアリング調査を実施したため。なお、平成28年度のヒアリング調査では、近郊以外の大学、就労支援機関に訪問することとしている。 ・平成27年度の3月に実施した学会発表の予算は、平成28年度の研究予算から支出することとしている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)追加のヒアリング調査の実施にあたり、15万程度の予算を執行予定 (2)質問紙調査の実施にあたり、業者に参考見積もりを依頼したところ、調査票の印刷・送付・回収・データ入力等の実施にあたり、80万程度の予算を執行予定 (3)発達障害のキャリア支援に関する有識者1名、大学の支援者3名、就労支援者3名からなる開発委員会を都内の会議室にて複数回実施するにあたり、30万程度の予算を執行予定 (4)支援ツールで利用するイラストの改修・電子ファイル化(紙に手書きで書かれたイラストをイラストレーターにて加工する)にあたり、業者に参考見積もりを依頼したところ、30万程度の予算を執行予定 (5)支援ツールで利用するテキスト文(イラストについての解説等)の作成にあたり、寄稿・監修を依頼するため、15万程度の予算を執行予定 (6)学会参加にあたり10万程度の予算を執行予定
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Research Products
(2 results)