2015 Fiscal Year Research-status Report
制限微小空間における有機分子の分散制御:クラスターからナノ結晶まで
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15K13262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
及川 英俊 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60134061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野寺 恒信 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10533466)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 相分離・結晶化過程 / クラスター・ナノ粒子 / 乳化重合 / ペリレン / ポリスチレン / 有機ナノ結晶 / 蛍光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
「制限微小空間である高分子微粒子に内包する有機分子の相分離過程、析出・結晶化速度を精緻に最適化することで、分子~クラスター~有機ナノ結晶までの分散状態を制御し、特に、有機分子クラスターの物性-構造相関を解明する。」という研究目的に即して、本年度は「重合場相分離・ナノ結晶化法」の基本的な作製プロセスの確立を図った。対象としたのは、ペリレン-ポリスチレン(PS)系である。 1.ペリレン-スチレン混合溶液を用いたソープフリー乳化重合(重合開始剤:KPS)を行った。一方、再沈法で予め作製したペリレンナノ結晶水分散液にスチレンを加えて、シード重合(重合開始剤:KPS)を行った。重合条件(温度および時間など)と得られたPSナノ粒子のサイズと形状、蛍光スペクトルの相関関係を明らかにした。 2.いずれの重合法においてもSEM観察の結果、PSナノ粒子のみ存在し、矩形状のペリレンナノ結晶は存在しなかった。このことは、ペリレンはPSナノ粒子中に何らかの分散状態で存在すると推定される。 3.重合条件を最適化した結果、ペリレン含有PSナノ粒子は、溶液状態のペリレン分子からの発光スペクトルとペリレンナノ結晶からの自己束縛励起子準位からの発光スペクトルの中間の波長帯域に微細構造の無い発光スペクトルを与えた。さらに、その蛍光寿命は、ペリレンナノ結晶の蛍光寿命約16 nsより大幅に減少し、約8 nsであった。これらの実験結果から、PSナノ粒子中のペリレンの分散状態は、分子状態ともナノ結晶とも異なる「中間分散状態」であることが示唆された。通常のペリレンバルク結晶あるいはナノ結晶はα型であるが、β型が微細構造のない蛍光スペクトルを与えることが知られている。今後は、PSナノ粒子中にあるペリレンの分散構造を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ソープフリー乳化重合およびシード重合法を駆使して、その重合条件を最適した結果、ペリレン分子ともペリレンナノ結晶とも異なるペリレンの「中間分散状態」をPSナノ粒子中に実現できた。ソープフリー乳化重合では、スチレンの重合に伴うペリレンに対する溶解度の低下による相分離・析出過程が重合プロセスと協奏(競争)的に進行したためと推定される。一方、シード重合では、添加されたスチレンによるペリレンナノ結晶の膨潤・溶解過程がやはり重合プロセスと協奏(競争)的に進行したためと示唆された。蛍光分光なども含めた実験結果から、「重合場相分離・ナノ結晶化法」を基本的に確立できた。これは再沈法に代わる新たな有機ナノ結晶の作製法であり、特に「最小サイズの有機ナノ結晶」の創出に今後繋がる成果である。 この「重合場相分離・ナノ結晶化法」の汎用性を検討するために、当初は次年度の研究計画であったポリメチルメタクリレート(PMMA)ナノ粒子中でのペリレンの分散制御についても前倒しで着手した。 さらに、PSナノ粒子のマトリクス構造とペリレンの分散状態の相関を検討するために、陽電子消滅法による解析を行った。その結果、いずれの重合法でもそのナノ細孔サイズは約0.3nmであった。これはペリレンを含まない通常のPSナノ粒子の値とほぼ同じであった。このことから、ペリレンの中間分散状態とPSナノ粒子マトリクスのナノ細孔構造とは特に相関がないことが明らかとなった。 以上、本年度の達成目標と得られた研究成果から、「当初の計画以上に進展している。」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
PSナノ粒子中に「中間分散状態」で存在するペリレン分子クラスターのサイズや分散構造の解析を行う。そのために、粉末法X線回折や偏光保持型光ファイバー搭載NSOM(NIMS現有)の計測を行う。さらに、屈折率整合条件下での光消失スペクトルの測定を試みる。これらの進捗状況を判断しながら、SAXS(SPring-8)のギニエ領域の評価やD化ペリレンを用いたSANS計測を検討し、分散ペリレンクラスターの慣性半径の評価を試みる。 一方、マトリクスとしてのPMMAナノ粒子を検討するとともに、分散物質系をペリレン誘導体(PDI)やジアセチレン(DA)に拡張する。特に固相重合後に得られると期待される「最小サイズPDAナノ結晶」が分散したPSナノ粒子から構成される低散乱損失の自己集積薄膜を作製し、光カー効果や正反射角度依存回折光強度の測定から、「ファブリペロー型光スイッチング素子」としての動作確認や誘電体多層膜としての機能評価を行い、「電子-光結合デバイス用素子材料」としての提案を行う。 最終年度、以上の研究計画を推進することで、当初の研究目的・目標の達成を図る。
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Causes of Carryover |
基本的な研究計画の変更は伴っていない。すなわち、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この未使用額は平成28年度請求額と合わせ、NIMSとの共同研究が重要となる次年度の研究遂行に重点的に執行する予定である。
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