2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13270
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 政宏 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (10466857)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フォノンエンジニアリング / フォノニクス / フォノニック結晶 / ナノスケール熱伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フォトンとフォノンの類似性から着想したバンドエンジニアリングにより、成熟した光波制御技術を伝熱工学分野に応用し、新しい伝熱制御技術を芽吹かせることに挑戦するものである。伝熱工学において熱拡散は粒子描像で扱うが、格子振動の集合である熱は本来波動性を有するため、波動性に基づいた伝熱制御が可能なはずであるが、いまだに実証されていない。 本年度は、周期300 nmのシリコンフォノニック結晶ナノ構造を作製し、4 K程度の低温および室温での熱伝導率測定を行った。円孔を正方格子状に配列した構造において、完全結晶とわずかに配列を乱した構造で有意な熱伝導率の差異を検出することに成功した。また、任意のフォノニック結晶ナノ構造におけるバンドダイアグラムおよび熱コンダクタンスを得られるシミュレーターを構築した。これにより、フォノン状態密度制御プラットフォームの設計や、波動性に基づいた熱流制御の設計が可能になり、本研究の目的である、光波制御技術を伝熱工学分野に応用するためのツールを得ることができた。このツールを用いることで、うまくフォノニック結晶を設計すると、直観に反する伝熱現象が起こることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画に記載した構造設計、形成技術の確立および測定システムの構築を終えることができ、2年間で応用可能性を明確にする計画であったが、初年度でその回答を得ることができたため、当初計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、希釈冷凍機を用いた極低温実験環境を構築しており、フォノニクスの実証実験に極めて理想的な環境で、シミュレーションによって得られた直観に反する物理の実証実験などを行い、伝熱工学を粒子的な領域から、波動性を積極利用した領域に拡張するための基礎実験を行う。
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